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エージェンティック・コマース時代のCX ー キーワードは「フライホイール型CX」「Authenticity」「店舗のブランド体験メディア化」【NRF2026レポート by NODE】
【変化3】店舗は「売り場」から「ブランド体験メディア」になり、LTVジャーニーの起点へ
NRFでの複数セッションを通じて発信されていたことのひとつが、「店舗はもはや売上を最大化するための場所ではない」という点でした。
エージェンティック・コマースが広がると、 商品を探す・比べる・買うといった一連の流れは、だんだんAIに任せられるようになり、生活者は店舗に行かなくても、 自分に合った商品をスムーズに購入できるようになっていきます。その結果、販売効率を高めるための場所としての店舗の役割は、相対的に小さくなっていきます。
一方で、店舗にしか担えない役割が、より明確になります。それが「このブランドは何者なのか」を、空間・接客・体験を通じて伝えることです。効率や即時的な売上創出ではなく、ブランドへの理解や共感を生み出す「ブランド体験のメディア」として、店舗はLTVジャーニー(=ブランドとの継続的な関係性の中で顧客生涯価値〈LTV〉を高めていく一連の体験プロセス)の起点へと役割をシフトしつつあります。
▶︎店舗KPIは「売上」だけではなく「関係性」へ
加えてNRFでの複数セッションを通じて発信されていたことは、店舗評価の指標そのものを変えなければならない、という問題意識でした。
どれだけ商品を売ったかに加え、
- どれだけブランドに共感してくれたか
- どれだけ「語りたくなる体験語りたくなる体験
- どれだけ熱狂的なファンを増やすことができたのか
これは、ひとつめのポイントで述べた「フライホイール型CX」とも接続します。店舗は、購買の終着点ではなく、「UGC・再訪・再購買・コミュニティ参加へと回転を生み出す起点」として再定義されていると考えています。
▶︎Abercrombie & Fitchに見る「店舗=ブランドの思想を編集する場」
象徴的だったのが、ファッションブランド Abercrombie & Fitchのセッションです。
Abercrombie & Fitchは、かつての排他的で強度の高い世界観から転換し、「誰にとっても安心して居られる空間」へと店舗体験を再設計しています。
彼らは、「店舗を単なる売り場ではなく、最もリッチなブランド体験メディアとして捉える」と語っていました。空間設計、スタッフの振る舞い、試着体験、 SNSで共有されることを前提としたビジュアル。それらすべてが、「このブランドは、社会とどう向き合い、誰のために存在しているのか」を編集・発信するメディア要素として設計されています。
▶︎DICK’S Sporting Goodsに見る「店舗=コミュニティと体験のインフラ」という再定義
また、総合スポーツ用品小売りチェーン DICK’S Sporting Goodsのセッションでは、店舗を「売る場」ではなく、「スポーツ体験とコミュニティを支える社会インフラ」として捉えることを繰り返し強調していました。
DICK’Sは、House of Sportをはじめとした大型店舗で、クライミングウォール、バッティングケージ、ゴルフシミュレーターなど、「その場で身体を動かし、スポーツの楽しさを再発見できる体験」を組み込んでおり、この体験設計の背景には、商品は体験の結果として売れるものであり、体験そのものがブランド価値の中核だという考え方があります。
ここで重要なのは、 これらの体験が「非効率な演出」ではなく、顧客との関係性を深め、LTVを高めるための戦略的投資として位置づけられている点です。
DICK’Sにとって店舗とは、
- スポーツに触れる入口であり
- コミュニティが生まれる場所であり
- ブランドの姿勢(スポーツを社会にどう根付かせるか)を示すメディア だと捉えています。
これはまさに、
「店舗=ブランドの思想と顧客との向き合い方を伝える体験メディア」という潮流を、体現した事例と言えるでしょう。

▶︎複数セッションを通して見えた共通項
複数セッションで共通して発信されていたのは、 店舗を「売上効率」や「メディア収益性」で語っていなかったことです。
彼らが語っていたのは一貫して、
- ブランドらしい体験
- 顧客との関係性
- コミュニティ
エージェンティック・コマース時代、購買はAIが最短距離で担う中で、人がわざわざ足を運ぶ店舗にはこれまで以上に「意味」と「文脈」が求められるようになります。店舗とは、ブランドのAuthenticityを最も立体的に伝え、その後のAIレコメンドや購買判断に「正しい前提」を与える、体験メディアであり、関係性の起点になっていくと考えています。

エージェンティック・コマース時代、日本のCXは何を再設計すべきか
今回のNRF 2026を通じて、エージェンティック・コマース時代のCXは、「AIをどう使うか」ではなく、「何をAIに委ね、何を人とブランドが担うのか」を再定義するフェーズに入ったと強く感じました。
だからこそ、これからのブランドには以下の役割が求められると考えています。
- 自分たちは何者かを問い続けること
- 生活者の世界を広げられる存在であり続けること
- Authenticityを届ける顧客体験を設計すること
▶︎日本企業はどう受け止めるべきか
生活者の日々の購買体験は、やがて「自分が好きそうなものが自然と集まってくる」「必要なものが、必要なタイミングであらかじめ購入されている」といった形へと変化していきます。
これまで購買の過程で行われてきた検索・比較・検討といったプロセスは、AIが吸収し、最短距離で完結させるようになるでしょう。
その結果、ユーザー自身が判断する機会は減少し、商品やサービスの違いは、SNSのアルゴリズムやSEO対策以上に見えにくくなっていきます。差別化は難しくなり、何が優れているのかが理解されにくい環境が生まれていきます。
そうした体験が当たり前になることを受け止めた上で、改めてCXやマーケティングの方針を見つめ直すことが必要なのではないでしょうか。
今回登壇していた世界トップクラスのリテーラー/メーカー企業が共通して語っていたのは、テクノロジーの先にある「Authenticity」への投資でした。それは、AIに選ばれるための小手先のテクニックではなく、真に生活者に信頼され続けるための前提条件だと感じています。これからは、AIツール導入や部分最適の競争ではなく、CXの思想や顧客への提供価値そのものがますます問われることになると考えています。
ブランドの本質的な価値に立ち返り、改めてリアルな体験価値を磨き上げていく。その価値を生み出していくのは、やはり人間の熱量や創造性なのではないでしょうか。
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