関西発・地方創生とマーケティング #43
京銘菓「聖護院八ッ橋総本店」はなぜ300年以上続くのか? 鈴鹿可奈子社長に聞く「変えるもの・変えないもの」
2026/04/07
- 企業経営,
聖護院八ッ橋総本店。おそらく皆さん、聞いたことあるでしょうし、食べたことがある方も多いのではないでしょうか。京都で300年以上続く老舗の和菓子屋さんです。私の職場、近鉄都ホテルズ(大阪)も、発祥は京都三条蹴上の都ホテル。聖護院八ッ橋総本店さんの200年後輩になりますが、京都で長くお商売を続ける秘訣をお聞きしたく、2024年に代表取締役社長に就任された鈴鹿可奈子さんを訪ねました。
京都とお土産の現状
まずは最近の京都の観光について伺いました。鈴鹿さんが言われるには、ここ10 年ぐらいで京都に来られる観光客が増え、特にコロナ禍を経てインバウンドが増えました。ただ、中国人観光客の方などは賞味期限のあるお菓子よりも、家電製品や化粧品を大量に購入されるので、昔から京都でお商売している店のお土産ものはなかなか見てもらえない、という現状があるそうです。昨今の訪日自粛の問題では逆に、遠のいていた日本のお客さまがお正月を中心に戻ってこられたそうで、自粛の影響をもろに受けていたホテルに勤める私としては、意外に感じられました。

聖護院八ッ橋総本店 代表取締役社長
鈴鹿 可奈子 氏
京都大学を卒業、在学中カリフォルニア大学サンディエゴ校エクステンションにてPre-MBA取得。「守るべきことを守ること、続けていくことが大事」という父・鈴鹿且久会長のもと、長い歴史と伝統の味を守り受けつぎながらも、新しい商品づくりに日々努めている。2011年、新しい形で八ッ橋を提供する新ブランド「nikiniki(ニキニキ)」を立ち上げた。
鈴鹿 可奈子 氏
京都大学を卒業、在学中カリフォルニア大学サンディエゴ校エクステンションにてPre-MBA取得。「守るべきことを守ること、続けていくことが大事」という父・鈴鹿且久会長のもと、長い歴史と伝統の味を守り受けつぎながらも、新しい商品づくりに日々努めている。2011年、新しい形で八ッ橋を提供する新ブランド「nikiniki(ニキニキ)」を立ち上げた。
ところで、八ッ橋をはじめとする京都の老舗の、長く続くお菓子やお漬物って、今の京都の若い人は食べているんでしょうか。鈴鹿さんに聞くと、減ってきているとのことです。
「いつしか『お土産はお土産』と、地元の人は食べなくなってしまった。美味しいことを知らずに育った人が親世代になっているので、今の子どもにとっては一層、遠いものになっています。昔はお土産ってそうではなくて、地元で日常的に食べられている美味しいものを、観光客が持ち帰りたいというものだったのですけれど」
大学でさまざまな地域から来られたご友人と接して、一層、京都にずっとお住いの方の八ツ橋に対する「距離」のようなものを感じられたそうです。「あまり食べたことがない」というご友人に八ッ橋を渡すと、「こんなに美味しかったっけ」と驚かれたといいます。

地元の人に食べてもらいたい
たしかに八ッ橋ってお土産のイメージがあります。実際、売上は観光客の比率が圧倒的に高く、利益だけ重視するなら「観光客だけを向いてもいい」という考え方もあります。けれど鈴鹿さんは「京都の会社として、それではいけない」と強調されます。
「『人と地元を大切に』がうちの考え方です。地元を見なくなってしまったら、どこでお商売しているのか分からなくなる。今はかろうじて、八ッ橋を食べた人が『なんか懐かしいね』と仰ってくださいます。その記憶、感覚を大事にしたいと思っています」
少しでも京都の方々に食べていただこうと、聖護院八ッ橋総本店は本社近くの公立小学校に特別な工場見学を、地域の運動会に商品を、そして町内会のお餅つきにはあんこを提供するといった形で、地域に根ざした会社であり続けているようです。
鈴鹿さんによると、最近では「京都の人は八ッ橋を食べない」と、SNSなどで言う人もいるらしい。そんな状況を変えて、若い人に気軽に食べてもらえるようにしたいと、鈴鹿さんが主導して2011年に立ち上げたのが新ブランド「nikiniki」です。これは私も食べましたが、色目の可愛らしい、食べるのがもったいないほどのお菓子です。あえて「八ッ橋」という名前を掲げず、日持ちもしませんが、すべてに新鮮な生八ッ橋を使っており、手作業で丁寧につくられているそうです。鈴鹿さんは八ッ橋の新しい楽しみ方を提案されたわけです。
地元のお客さまを大切にすること。時代に合わせて新しい提案をしていくこと。京都に根付いた老舗としての鈴鹿さんの姿勢には、とても共感します。ホテル業もまた、特にレストランは地元のお客さまなしには成り立ちません。1890年創業の都ホテルを祖業とする当社グループも、良く言えば歴史があり、裏を返せば古臭い。そしてお客さまの年齢層が高い。そこで、たとえばシェラトン都ホテル大阪では人気水族館「海遊館」とコラボしたアフタヌーンティーをお出しして若い女性に訴求するなど、将来の顧客獲得につなげる施策を展開しています。




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