ニュースと体験から読み解くリテール未来像 #63
日本のコンビニと似ているが異なる ジャカルタ2大ミニマートの"役割の違い"
2026/07/07
日本のコンビニをそのまま重ねると見誤る
AlfamartやIndomaretには、日本のコンビニと似た商品もあります。飲料、菓子、即席麺、日用品、アイス、化粧品、オムツ。おにぎりも置かれています。ローソンと連携した商品や、日本のキャラクターを使った商品も見かけました。
ただし、買われ方は日本とは違います。
オフィス街に近いミニマートでは、日本のコンビニに近い品揃えも見られます。一方で、一歩街中に入ると、棚の見え方は変わります。所得、生活動線、家で保管できるもの、移動手段、食習慣が違うため、同じチェーンでも「どこにある店か」によって生活への寄り添い方が変わるのです。
たとえば化粧品では、小さいサイズの使い切り商品が目立ちます。日本ならトライアルサイズや旅行用に見えるものが、現地では日常購入の単位になっています。所得水準や購買頻度を考えれば、容量を小さくして、1回あたりの支払い額を下げることが重要になります。
この点について、小林さんは「小さいサイズで、割高でも、買える単価に下げる必要がある」と話していました。
ここが重要です。日本企業は、品質の良い商品をそのまま持っていけば売れると考えがちです。しかし、現地では「良い商品か」以前に、「今日買える価格か」「使い切れる単位か」が問われます。
小容量・低単価の意味
新興国市場では、単価を下げるために容量を小さくする商品設計が重要になります。1ml・1gあたりでは割高でも、1回の支払い額が下がれば購入しやすくなります。日本企業は「高品質をそのまま」ではなく、「買える単位に再設計する」発想が必要です。化粧品、飲料、菓子、日用品のいずれも、買える価格・保管できる容量・使い切れるサイズが重要になります。
同時に、どこまで日本品質を持ち込むべきかも考える必要があります。日本ブランドのイメージである「安心・安全」は譲れません。一方で、容器、キャップ、ポンプなどの品質基準まで、日本と同じ水準を前提にすべきかは別問題です。

現地では、キャップが取れたり、ポンプの出が悪かったりしても、日本ほど強いクレームにつながらない場合があります。品質を下げるという話ではなく、生活者が本当に重視する価値と、過剰品質で高コストになりやすい部分を切り分ける必要があるということです。
これは食品でも日用品でも同じです。日本では割安な大容量やお得用が評価される場面が多いですが、インドネシアでは、冷蔵庫の保有状況、保管スペース、日々の現金支出、移動手段が違います。商品設計の前提そのものを変えなければなりません。
冷蔵庫が前提ではない市場で、どのように売るのか
ミニマートを見ていて、もうひとつ考えさせられたのが冷凍・冷蔵の前提です。
日本の小売業では、冷蔵庫も冷凍庫も家庭にあることを前提に商品が設計されています。冷凍食品、チルド惣菜、アイス、ヨーグルト、牛乳、肉、魚。家庭で保管できるから、ある程度まとめて買えます。店舗側も、家庭内冷蔵庫を「店外の保管場所」として暗黙に組み込んでいます。
ところが、インドネシアではその前提が弱いです。現地での会話でも「冷蔵庫を持っていない層がまだ多い」「冷凍品は買える人が限られる」という話が出ました。冷蔵庫保有率が3~5割程度と言われています。少なくとも現場を歩くと、日本のように全世帯が冷蔵・冷凍保管をできる市場ではないことが実感できます。
この違いは大きいです。冷蔵庫がなければ、まとめ買いはしにくくなります。肉や魚、冷凍食品、チルド惣菜は買いにくい。アイスも持ち帰り時間が制約になります。だからこそ、小容量、常温、即食、買ってすぐ食べる、という商品が強くなります。
なお、インドネシアでは、近年コールドチェーンや冷凍食品市場は成長しています。冷凍食品市場は2025年時点で33.8億ドル規模、2031年には50.1億ドル規模に成長するとの予測もあります。一方で、家庭の冷蔵・冷凍保管、物流の温度管理、地方配送網にはまだ制約があります。冷凍食品の成長は、都市中間層と近代小売の拡大に支えられている状況です。
この視点でAlfamartやIndomaretを見ると、単なる「小さいコンビニ」ではなくなります。
常温で置ける。すぐ食べられる。少額で買える。家に保管しなくてよい。必要な時に近所で買える。これらは、所得水準だけでなく、家庭内インフラの違いに対応した小売フォーマットなのです。
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