関西発・地方創生とマーケティング #08
「止まった時計でいろ」 500年続く、灘の蔵元「剣菱」の家訓【白樫政孝社長】
2018/12/18
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Price 皆が等しく食事とお酒を楽しめるように。
高い値段にするほど、ブランド価値も上がって良い、と周囲の人から言われるそうですが、そういう話には一切乗らない、とのことです。「信用を無くすと、500年のブランドが一瞬にしてなくなる」と。そして、ここでも家訓が効いてきます。「一般のお客さまが少し背伸びしたら、手の届く価格までにしろ」
原価を知ることができるのは企業側だけです。白樫社長いわく、「情報が非対称なので、お客さまは自分が損していないかを気にする。だからこそ、買える値段であることが大切だ」と説きます。
原材料にこだわり、手間暇かけて“変わらぬ味”を守っている以上、お米の生産者や蔵人たちの技術と労力を“安売り”するつもりはない。ただし、あまり高すぎて一般のお客さまの日常から離れてしまったのでは、そもそもお酒である意味がない、と。
Place 海外進出は販路拡大のため、ではない?
最近、白樫社長は、フランスなど海外に出かけています。普通に考えれば、国内の人口減少に伴い、海外に販路を広げることが目的だと思うのですが、それだけではないようです。目的は、勉強のため。食の都パリでワインと食事という味覚の合わせ方、そしてその説明の仕方を学ばれるそうです。
例えば、ソムリエがワインについて、地中海の匂い、土の香りという表現をするときは、それぞれ地中海の魚、キノコを使った料理に合うということではないかと言います。
そして、これは日本でもどの料理と合わせるか、同じ香りを合わせて外れはないとのこと。
お酒は、その“味わい”もさることながら、お酒を飲むことで食事がより美味しくなったり、会話がより弾んだりと、“楽しいひととき”を過ごしてもらうことにこそ、最大の意義があると話します。
例えば、社外の偉い人の時間を昼間に2時間もらうことは、なかなか難しいですが、夜なら比較的にチャンスがあります。それは、その場にお酒と食事があるからです。そして、その場をうまく運ぶため、社内での飲み会の段取りなど、普段から訓練しておくべきではないか、と。
そして、もう一つ学んだものは、時間の贅沢は共通ということだそうです。海外ではよく昼間から飲んでいるシーンを見かけますが、日本でも江戸時代は飲んでいたようです。お金の贅沢ができるかは人によって差があれど、時間の贅沢はあまり差がありません。それをうまく伝えれば、お酒の消費も増えるのではないか 、と言います。
後編(1月上旬公開予定)では、Promotionの観点から剣菱を分析してみたいと思います。
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