関西発・地方創生とマーケティング #44後編
ガンバ大阪が11年ぶりに優勝した意外な理由 水谷尚人社長に聞くスター育成と地域・企業との関わり
2026/09/09
ガンバ大阪の水谷尚人社長を訪ね、プロサッカークラブとホテルの共通項や経営のヒントを取材した本記事。前編ではファンとの関係、感動を届けること、そしてプロ経験のない経営者がクラブ経営を担うことについて伺いました。後編はさらに水谷さん独自の経営術や地域・企業との関わりを深掘りします。
「いい顔してるかな」ファミリー目線で選手を見守る
水谷社長は選手の練習によく顔を出すそうです。ただ、そういう時に注意しているのは、監督やコーチ目線ではなく、ファミリー目線になること。
「たとえば選手の顔つきがいつもと違っていたら、それはサッカーの問題じゃなくて、家族と喧嘩したせいかもしれない。選手にとっても『みられている感覚』はすごく大事だと思うんです。人は無視されるのがつらいですよね。だから『みる』は『観る』。練習を観て、サッカーが上手いかどうかは監督が決める話なので、『何か悩みを抱えていないかな』『『いい顔してるかな』といったことを観察するようにしています」

ガンバ大阪 代表取締役社長
水谷 尚人 氏
早稲田大学を卒業後、リクルートに入社し、1992年に公益財団法人日本サッカー協会に転職。その後、1996年から2002年までFIFAワールドカップ日本組織委員会に出向。2002年にSEA、2003年にスポーツマーケティングを手がけるSEA Globalを設立し、代表取締役に就任。起業後、2002年から湘南ベルマーレの強化部長、取締役、代表取締役社長を務め、2016年から平塚市教育委員(~2020年)、2023年から公益社団法人日本プロサッカーリーグ カテゴリーダイレクター(~2024年)を務める。2025年1月にガンバ大阪 代表取締役社長に就任した。
水谷 尚人 氏
早稲田大学を卒業後、リクルートに入社し、1992年に公益財団法人日本サッカー協会に転職。その後、1996年から2002年までFIFAワールドカップ日本組織委員会に出向。2002年にSEA、2003年にスポーツマーケティングを手がけるSEA Globalを設立し、代表取締役に就任。起業後、2002年から湘南ベルマーレの強化部長、取締役、代表取締役社長を務め、2016年から平塚市教育委員(~2020年)、2023年から公益社団法人日本プロサッカーリーグ カテゴリーダイレクター(~2024年)を務める。2025年1月にガンバ大阪 代表取締役社長に就任した。
経営者がどれだけ選手に関わるべきかは、ケース・バイ・ケースだそうです。ただ、監督によっては、経営サイドが選手と直接深く話すことを嫌がるケースがあるとのこと。基本は、監督ときちんとコミュニケーションを取ることが大事だと言います。
そして選手がコミュニケーションをしっかり取るべきなのは経営者よりも、やっぱり監督。選手にとって、監督の指示は死活問題だからです。
秘訣は優勝ボードのスペース?
とは言え、ガンバ大阪の選手たちは意外と(?)経営サイドの話をよく聞いているな、と思った出来事があるそうです。
水谷社長は2025年1月に着任され数ヵ月経った時から、「ガンバは環境が良くて、良い選手も揃っているのに、なぜ優勝できないんだろう」と疑問に思っていたそうです。ひょっとして、スタジアムのスタンドに掲出している歴代の優勝ボードが、端から端まで隙間なく並べられているせいではないか?
そこで、いかにも「ここが空いています」というふうに、スペースを空けてみた。そしてシーズンが始まる時に「ここを今年の優勝旗で埋めよう」と発破をかけると、今年5月、サウジアラビアで行われたAFCチャンピオンズリーグ2で11年ぶりのタイトルを見事、獲得することができました。
でもあんな話、誰も聞いていないだろう、覚えていないだろう…と思っていたら、シーズン後に「あれがいい意味でプレッシャーになった」と、何人かの選手に言われたということです。
「監督だけでなく、経営サイドもそういうメッセージを発信することが、選手にとって良い影響を及ぼすことがあるんだと、改めて思いましたね」
スターが生まれる理由
FIFA W杯2026の日本代表には、堂安律選手や中村敬斗選手、鎌田大地選手など、ガンバ大阪ゆかりの選手が複数選出されていました。そんなスターが輩出される背景は何なのか。親会社であるパナソニックのサポート体制なのか、ガンバ大阪の文化なのか…。
いくつか要因は考えられましたが、水谷社長いわく「アカデミーに尽きるんじゃないか」とのこと。1991年にJリーグが設立された際、初代チェアマンを務めた川渕三郎さんが「全チームにつくりなさい」と号令してできた、育成組織の存在を挙げられました。
堂安選手はオフシーズンになると今も挨拶に来て、自身が育ったアカデミーで話をしてくれるそうです。
「アカデミーがあったから今の自分がいると思ってくれて、嬉しいものです。彼が若い選手に『将来ヨーロッパでプレーしたかったら、英語は勉強しておいたほうがいい』などと語ってくれるのも、ありがたい。実際、ヨーロッパのエージェントと話していると『日本の選手は素晴らしいけど英語がしゃべれないことで実力の3割落としている』などと言われるのですが、同じことを経営サイドが言うよりも、実際にヨーロッパで活躍する堂安選手が言ってくれる方が断然効きますね」
プロサッカー選手の練習時間は一日2時間程度。残りの22時間をどう使うかで、選手の人生は大きく変わると言います。ガンバ大阪の選手は比較的、「自分に投資している」そうで、英語の勉強やパーソナルトレーニングなどに時間を使っています。スター選手はやっぱり、自ら努力しているものなのですね。
統括組織であるJリーグでは発足以来、選手の「セカンドキャリア」を見据えた研修などに力を入れているそうです。ただ水谷社長は、「それもすごく大切なことだけど、突き抜けるにはやはり、選手である間はサッカーに集中すべきではないかと思うことがあります」と語ります。
育成については、じつはホテルも似た悩みを抱えています。接客も調理も、プロフェッショナルになるには、特に若い時にどれだけ経験を積むかで決まることが多い。近鉄グループのホテルでも、名シェフと呼ばれるのは、そうやって自ら腕を磨いてきた人ばかりです。
今は時代の流れで、若い人が育ちにくい環境になってきた。難しい問題です。でも実際、業界を問わず、活躍している人というのは20~30代の頃に仕事・勉強に努力してきた人が多い気がします。




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