アドボケイツに特徴的な行動は「推奨」だけではない
なぜ、いま、アドボケイツが重視されるようになったのでしょうか。理由は2つあります。ひとつは、産業が成熟し、あらゆるブランドの機能的なベネフィットの差異が小さくなっていること。そしてもうひとつは、SNSの投稿やWebサイトのレビューをはじめとするデジタルネットワークにより、それまで見えなかった推奨口コミが可視化されたことです。いずれにせよ、アップルのような特別にユニークなブランドでなくても、強力なアドボケイツ=熱狂的なファンが存在し、ブランドの味方にできることがわかってきたのです。
それでは、強力なアドボケイツは、特別な感情を持っているブランドについてどのような行動を行うのでしょうか。
ひとつは、その名の通り「推奨」です。私にMacを買わせた(笑)先輩のように、周囲の知り合いに対して態度変容を強く促し購買意向を高めます。もしブランドのイベントでもあれば、積極的に誘うかもしれません。
ちなみにヤッホーブルーイングには、アドボケイツが多数含まれている「ひらけ!よなよな月の生活」というサブスクリプションサービスがあります。2017年の秋に都内で開催し4000人を動員した自社イベント「よなよなエールの超宴」には、参加した「ひらけ!よなよな月の生活」会員ひとり当たり、2.56人の非会員のお客さまを連れてきてくれました。
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また、推奨はリアルな口コミやSNSの投稿だけでなく、商品そのもののやり取りを伴うこともあります。ある会員の方は、しばしば近所へ「よなよなエール」をおすそ分けして、喜ばれているそうです。
もうひとつの特徴的な行動としては、「ブランドの擁護」があります。かつてヤッホーブルーイングの社長・井手(ニックネーム:てんちょ)が、ECサイトの運営担当だったときのことです。ある常連のお客さまから、メルマガの内容について「文章がふざけている」など、クレームを何度もいただいたそうです。
しかし、あるときそのお客さまから、今度はお詫びのメールをいただいたのです。聞くところによると、よなよなエールのファン同士の飲み会で、他のファンの方に「てんちょにも考えがあるんだから、ファンならわかってあげなよ」とたしなめられたそうです。
有名な例を挙げれば、ペヤングの異物混入事件からの復活も、アドボケイツのブランド擁護行動の結果として説明することができるでしょう。