ネガティブな表現が当事者たちの心に火をつけた。
このポスターは品評会の参加メンバーたちから全国のお茶関係者へと配られて行った。と同時にプロジェクトに賛同したところから活動費を集め始めた。そんな中、このポスターの内容に対して様々な反応が出てきた。
「万事急須」というシャレはわかるし現実問題だが、あまりにも未来を感じられない。こんな暗いビジュアルは、お店に貼りたくない。もっとポジティブな表現にして業界全体の雰囲気を変えたい・・・などなど。実は当初からこのような自発的な反応を待っていた。というのも、ポスターを制作した理由は業界の当事者たちを結束させるため。そのためにまずは現状を受け入れ、それを打破していくやる気や熱意を呼び起こしたかった。こうしてネガティブなポスターは役割を果たし「淹れよう日本茶プロジェクト」は加速を始めていく。
まず初めに行ったのは、プロジェクトの中期目標の設定。メンバーの誰もがイメージでき、やる気が出るもの。メンバーとの話し合いの中で私は「2020年のウエルカムドリンク」というワードを提案した。
当時は2016年。直近のゴールは2020年の東京オリンピック・パラリンピックに訪れる外国人たちへ淹れたてのお茶でもてなし「日本のウエルカムドリンク」になること。国際空港などで実施し、その報道が日本中に発信される。そんな絵が浮かんだ。
現在「淹れよう日本茶プロジェクト」は東京オリンピック・パラリンピック競技大会推進本部が行っている日本文化の魅力を発信する政府公認の文化プログラム「beyond2020」に正式に参加し、学校教育で日本茶の授業を行ったり、訪日する要人たちに日本茶を広める活動したりしている。今年のラグビーワールドカップでも日本茶でおもてなしする予定だ。4年前に思い描いた絵が少しづつ現実へと近づいている。
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昔はお茶の間で大活躍をしていた「急須くん」がペットボトルの登場により食器棚の奥へとしまわれ「万事急須」となるが・・・というようなストーリーをクレイアニメーションで表現。この動画の効果もあり、プロジェクト参加団体は増え、産地や自分の生業を超えて日本各地の団体が参加し、全国のあちこちで日本茶を盛り上げる活動を推進させていく体制が整っていった。
急須くんのクレイアニメーション