「複雑化への対応」と「わかりやすさ」の両立
その時に注目しなければならないことは、マーケティング/広告ビジネス界の、凄まじい勢いでの「複雑化」です。
現実の「複雑化」に対応するには、部門(ライオン)を増やさざるを得ない。そのようにして、部門(ライオン)は27にも膨れ上がることになります。
しかし、「キュレーション機能」は、自分でぜんぶ当たらなくても「目利き」である審査員によってチェックすべきものが分かる、といういわば簡略化の機能です。「複雑化への対応」と分かりやすさを求める「キュレーション機能」は、本質的に相反する性格を持っています。ここにこそ、運営サイドの最近の苦悩と努力があるわけです。
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現在のカンヌライオンズは、その相反をどのように解決しようとしているのか?その答えは、「複雑化への対応」は、それはそれで行いつつ(部門は増え続けています)、なんとか「分かりやすさ」を担保しようという試みです。
具体的には、昨年導入した「9つのトラック」があります。昨年は、まだ恐る恐る運用している感じがあったのですが、今年はずっと強く打ち出しています。賞応募と審査はもちろん、セミナーもすべてこの9つのトラックに分けられていて、それぞれのトラックに「トラック・アンバサダー」という統括者のような人(審査委員長の中から選定)まで設定されました。
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また、セミナーに関して言えば、この9つのトラックに加えて、「10のテーマ」というものも設定されました。実際に会場で見るべきセミナーを決める際に、「9つのトラック」ごとでも絞り込みが出来るし、「10のテーマ」ごとで絞り込みを行うことも可能なのです。
しかし、それで果たして「分かりやすさ」はどれくらい増したのか?次回は、そうした点にも踏み込んで行こうと思います。
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