ヒット商品「オルビスユー」1年で累計460万個
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田岡 現在は、どのようなミッションを掲げているのでしょうか。
小林 提供価値は「スマートエイジング」、ブランドコンセプトは「ここちを美しく」です。簡単に言えば、「他人との比較ではなく多様な美を受け入れ、自分らしく年齢を重ねるための“ここちよさ”をつくっていこう」という思いを込めています。そして、その裏側にあるのが「ヒーリング・バイ・サイエンス」という考え方です。
オルビスは1987年のバブル期にローンチしたブランド。世の中がどんどん絢爛豪華になる中で大手化粧品会社とは異なる選択肢を提供するという意味で、リベラルなブランドであることが創業時のフィロソフィーなんです。初期のパッケージデザインを見ると、バブル時代に、よくこんな地味な商品を出したなと思うほどです(笑)。
田岡 2018年にリニューアルした「オルビスユー」にブランド全体を寄せようとしているのですか。
小林 そうですね。具体的なビジネスの考え方として、その会社のロゴを見たり、商品名を耳にしたりした時に、お客さまの頭に「ブランドが約束している価値」が思い浮かぶことを目指しています。
もともとオルビスが持っていたリベラルでナチュラルなポジションがオーガニック化粧品に取られたので、そこをサイエンスから凌駕しようと考えています。オーガニックブランドは「なんとなく優しくていいのは分かるけれど、結局どんな効果があるのかが分からない」と思われているため、ボディケアやギフト商品が売れる傾向が顕著でLTVの高まりに限界がある。
そこで「ナチュラルだけど、サイエンスに裏打ちされているブランド」を示す戦略にしたんです。オルビススキンケアのベースである「自分自身の潤う力を引き出す」ことの進化を明確にしました。
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田岡 油分をオイルによって足さずに、体から引き出すという。
小林 そうです。油取り紙で自分が出すオイルを拭いているくらいですから、自分から出せばいいという話ですよね。だから、もう一度基本に立ち返って「オルビスユー」は肌の中の水を巡らせて、細胞の自活力を上げてふっくらさせるというコンセプトにしました。デザインもそれを体現するオルビスらしいシンプルさを追求した結果、発売から1年で異例の販売累計460万個を突破しました。