自らを放送局と宣言、リアルタイムにこだわりテクノロジーを使い倒す
誰もが知るウィンブルドン選手権(全英オープンテニス)の本戦は、毎年7月に2週間にわたって開催される。主催者である、「All England Lawn Tennis and Croquet Club(以降AELTC)」は「世界最高のテニストーナメントを提供する」というミッションステートメントのもと、その価値を世界に発信するということに多くの熱量を注ぎ込んでいる。
AELTCと私が所属するIBMは、1990年から29年間にわたり、変革のためのパートナーシップを継続し、共に走り続けている。
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ウィンブルドンを訪れると、とにかく美しい。17面あるコートでは世界トップレベルの選手が圧倒的な技術、熱量を持って、秀逸なスポーツコンテンツを生産し、洗練された観客とともに織り成す雰囲気は格別だ。
この素晴しさを、いかにして伝えるか。AELTCとIBMが注力しているのは、リアルタイムにコンテンツを切り取って伝えることであり、そのためにAI(人工知能)やデジタルテクノロジーをふんだんに投入している。
その中でも、最も効果が高いのは、例にたがわず動画である。今年、AELTC はOTT(Over The Top)サービスである「WIMBLEDON CHANNEL」を開設し、試合映像をリアルタイムで配信することで、自らを「Broadcaster(放送局)」であると宣言。
BBCをはじめとしたテレビ配信は従来どおり実施するが、より多くのユーザーが持つスマートフォンを中心に、フレッシュなコンテンツを手元に届けることを最重要事項として相当な投資を行っている。
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「観たい、知りたい」を逃さない、コンテンツ制作
また、特設サイトである「Wimbledon.com」内では、ハイライト映像が試合終了後わずか5分以内で公開されている。「IBM Watson」によって開発されたシステムが、3時間を優に越える5セットマッチを観戦し、あらかじめ学習しておいた「エキサイト」なシーンを抽出・サムネイル化し、デジタルコンテンツ編集者がマッシュアップしてハイライト映像を作成する。従来50分ほどかかっていた編集作業が、わずか5分に短縮され、完パケされるのである(※注目度の高い6面のコートで採用している)。
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