「IOWN×Perfume」:自社以上に自社のことを理解するクリエイティブパートナーとの協働
プロジェクト概要:
NTTの次世代通信基盤「IOWN(アイオン)」技術を活用し、Perfumeのパフォーマンスを時間と空間を超えてリアルタイムに伝送・再現するという、大阪・関西万博のNTTパビリオンで展示された未来型エンターテインメント体験。パビリオンのオープンを控えた2025年4月2日、IOWNを活用した世界初のリアルタイム3D空間伝送実験をPerfumeのライブパフォーマンスにて実施し、世界で初めて成功。パビリオン来場者は、このパフォーマンスを追体験することができた。
吉川勲氏NTT 研究開発マーケティング本部 マーケティング部門 / NTTパビリオン 館長
ー 今回受賞された「IOWN×Perfume」は、非常に多くのクリエイティブパートナーが関わったプロジェクトです。長年にわたるパートナーシップを築く上で注意・工夫されていることを教えてください。
電通さんや(つづく)さんをはじめとするパートナーの皆さんとは、「コミュニケーションの未来」という観点でさまざまな施策をご一緒してきました。常に意識してきたのは、彼らのクリエイティブな発想を押さえつけないこと、彼らの感覚を最重視することです。
ー 吉川さんは、お仕事の中で多くのクリエイティブ人材との接点を持たれています。ビジネスパーソンとして、そうした方々との接点を持つことの意義をどのように感じていらっしゃいますか。
私は、PRやマーケティングの領域を長く歩んできた、NTTの人事制度においてかなり珍しいケースの人間だと思います。大阪・関西万博の前には、東京2020オリンピックのプロジェクトに6年間携わりました。メディア、クリエイティブ、マーケティングといった領域の方々と多く接する中で、世の中の動きの最前線を知り、それを自社の事業に還元するのは非常に意義のあることで、私のポジションならでは貢献の仕方だと思っています。
ー 今回受賞されたプロジェクトに関するクリエイティブパートナーからの提案で、オリエン時の期待を超えていた部分はありましたか。
私たちがお願いしたのは、「未来のコミュニケーション」を示すことでした。NTTは1970年にワイヤレスフォンを生み出し、「線でつながらない電話」という新しいコミュニケーションの時代が訪れることを示しました。では、現代における「未来のコミュニケーション」とは何なのか——。私たちは、それは「相手の存在を感じること」ではないかと考えました。相手の存在を感じるとは、同じ空間にいるかのように相手を立体的に認識し、視覚や聴覚だけでなく、触覚を含めた五感全体で相手を感じられるということです。そうした未来のコミュニケーションの姿を示したい、という思いをお伝えしました。
クリエイティブチームは、そのコミュニケーションの未来を、物語性のある作品として見事に具現化してくれました。通信会社である私たちが、1970年から脈々とつないできた事業の歩み、すなわち日本のコミュニケーション技術が進化してきた軌跡を、丁寧にストーリーとして紡いでくれたのです。NTTパビリオンの来場者・視聴者が自然と腹落ちするような、日常生活に寄り添ったストーリーが描かれ、その先に「未来のコミュニケーション」が提示されていました。これは私たちだけでは決して実現できなかったものであり、非常に感銘を受けました。正直なところ、私たち以上にNTTのことを深く理解しているのではないか、と感じるほどでしたね。
ー まさに、長年のパートナーシップがあってこその提案だったのですね。今回のプロジェクトの構想から具現化に至るまで、最も難しかった点はどこでしたか。
一番大変だったのは、社内の合意形成です。今回、NTTパビリオンの体験テーマは「PARALLEL TRAVEL(パラレルトラベル)」になりました。次世代情報通信基盤「IOWN」による空間伝送技術を用い、離れた場所と空間をつなぐことで、「時空を旅する」ような体験を提供するものです。
実は当初、このコンセプトを「テレパシー」と呼んでいた時期もありました。未来のコミュニケーションとは、テレパシーなのではないか、と。でも、来場者がきちんと腹落ちできるギリギリのラインを突き詰めた結果、生まれたのが今回の「パラレルトラベル」でした。未来のテクノロジーを、今の段階で“ギリギリ示せる形”として提示したのが「IOWN×Perfume」です。来場者体験を最優先に考えたとき、コミュニケーションの未来を最大限に示せるラインはどこなのか。それを幹部一人ひとりに説明し、理解してもらうプロセスは、本当に骨の折れる仕事でした。
「テレパシー」というアイデアも、決して根拠のない夢物語だったわけではありません。ある程度のレベルであれば、実現の目算も立っていました。ただ、もし「テレパシー」のまま突き進んでいたら、今回のように多くの方に感動していただいたり、純粋に楽しんでいただいたりするところまで昇華できなかったのではないかと思います。社内の声と、来場者に体験し、感じてもらいたいことをどう重ね合わせるかを考え、最終的に社内をひとつの方向にまとめていくこと。それが私の役割でしたし、一番大変なところでしたね。
― 吉川さんが実現されたのは、「みんなが信じられる未来をつくる」ことと言えるように思います。あまりにも先進的な“夢物語”ではなく、「これなら実現できるかもしれない」と来場者が感じられ、同時に「この未来を必ず実現しよう」と関係者が思える、そんなビジョンを示されたのだと思います。
今回描いたのは、3~5年後といった近い将来ではなく、10~20年後、今の子どもたちが大人になったときの世界です。1970年にワイヤレスフォンを発表し、その後1990年代に携帯電話として社会実装されたように、技術が現実になるまでには時間がかかります。では、20~30年先の未来として、今この時点で“ギリギリ示せる世界”はどこまでなのか。
もしかしたら、その頃にはテレパシーが実現しているかもしれません。ただ、現時点では、来場者に体験として楽しんでいただけるレベルには、まだフィジビリティが整っていなかった。だからこそ、本当にギリギリ示すことができるテクノロジーと、未来のコミュニケーションの姿をどう提示するかに、心を砕きました。




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