マーケターズ・ロード 元グーグル日本法人代表 村上憲郎 #01
Google日本事業を成長させた「徹底的に任せるマネジメント術」元グーグル村上憲郎
村上氏はマネジメント手法をどう身につけたのか
そういうマネジメント手法を身につけることになったきっかけは、31歳のとき、新卒で入社した日立から外資系IT企業のDECに転職したことでした。
日立でエンジニアとしてのキャリアを重ね、最後は技師として何人かの部下を持っておりました。しかしエンジニア集団というのは、“サークル活動”のような雰囲気があって、みんなで助け合いながらものをつくるのが基本スタンス。ということもあって「メンバーをマネジメントする」という意識は、ほとんどありませんでした。
そんな私がDECに営業職として転職することになったのです。しかも、入社一年後からは部下を抱える立場として。人さまをマネジメントするなんて恐れ多いことを一体どう実践すればいいのか、皆目見当もつきませんでした。
でも、そこはさすがの外資系企業。新任マネージャーには必ず「マネジメント」を学ぶプログラムを受けさせる仕組みが整っていました。
受講したのは、デール・カーネギー・マネジメントコース。教科書は『人を動かす』(デール・カーネギー著)です。Amazonビジネス書ランキングで常に10位以内に入っているような永遠のベストセラーですよね。私は同書に書いてあることを、その通りに実践しました。
目次のページをデスクの引き出しの中に常備。そこには、「部下を人前で叱ってはいけない」「何かを指摘するときは、ずばり答えを言うのではなく、相手に気づかせる・思いつかせることが重要だ」といった、マネージャーに不可欠の心構えが書かれています。
毎朝出社してそれを見ては、「ああ昨日、あそこで間違えたな……」と一人で赤面しながら反省する日々でした。
グーグル日本法人の社長、グーグル米国本社の副社長とマネジメントのレイヤーが上がってもマネジメントの原理原則は変わりません。
このDECで身につけたことを、その後のキャリアにも生かすことができました。