マーケターズ・ロード 元グーグル日本法人代表 村上憲郎 #03

「最悪の事態を想定していれば、問題は解決する」元グーグル 村上憲郎に影響を与えた2人の先輩

仕事に向き合う意識を変えてくれたアドバイス


 もう一人もDEC時代の人。同い年の同僚が、仕事に向き合う意識を変えてくれました。

 入社後ほどなくして、私は産業用のマシンにミニコンを組み込む顧客を担当する部門に配属されました。水が合ったのか、好調な営業成績を収めた私は、2~3年目には全世界のDECのトップセールス「DECthlon」に日本から初めて選ばれ、あっという間にユニットマネージャーを任されるようになりました。残念なことに部下がつき、先般の苦労話につながるわけですが(笑)。

 私は新卒で入社した日立で「顧客にいかに迷惑をかけないか」、品質管理や顧客満足について徹底的に叩き込まれていましたから、それをDECでも実現しようと躍起になっていました。

 ところがDECのマシンは、かつてのアップル製品と同じで、まあすぐ壊れるわけです(笑)。確かに素晴らしいコンピュータではあるのですが、納品されたばかりの製品がすでに動かないということが珍しくない。もちろん修理には対応するのですが、そんな品質の製品、すぐにまた壊れるわけです。



 そんな状況に何とか対応し、改善しようと、私は血走った眼をして走り回っていました。ボスがそんな調子ですから、部下もそうせざるを得なかったでしょう。そんな矢先、件の同僚が声をかけてくれたのです。

 「周りから見ていると気の毒で仕方がない。ちょっと肩の力を抜いたらどうか」と。そして、カーネギーの『道は開ける』という、もう一つの名著を教えてもらいました。

 言ってみれば、悩みを解決するための一冊です。各章にまとめがついていて、総括すると「常に最悪の事態を想定していれば、問題は必ず解決する」という趣旨のことが書かれています。

 まず、最悪事態として納品した製品が返品されるということを受け入れる。その上で、それを避ける手立てを考える。最悪の事態を常に覚悟し、できるだけその事態が起こらないよう対策をしていれば、精神状態が安定するのです。最悪の事態を想定していないと、あれもこれもと不安になって心身ともにのたうち回ることになるわけです。

 DEC時代に2人の人物から得た2つの教訓。直接的ではないにせよ、現在に生きている部分は大きいと思います。

 ※最終回「5Gの到来、次の時代を制するチャンスを逃すな」に続く
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