マーケターズ・ロード 元グーグル日本法人代表 村上憲郎 #04

5Gの到来、次の時代を制する「チャンス」を逃すな ― 元Google日本法人社長・村上憲郎

インターネット領域における「遅れ」を取り戻せ


 現在は、経済産業省や総務省、内閣府のプロジェクトに参加し、IoT・ビッグデータ・AIと5Gのエバンジェリストとして全国各地で「第四次産業革命」や「地方の地場産業の再興計画」について話をしています。

 グーグル日本法人の代表を務めていたときから、インターネットをはじめとするテクノロジーの重要性を日本全体に啓発し、実用に向けた取り組みをサポートしたい思いは強く持っていました。

 私は、今IoT・ビッグデータ・AIそして5Gによってもたらされている大きな転換点を、ぜひ日本がインターネット活用において取り続けてきた遅れを取り戻す機会にしてほしいと願ってやみません。



 残念ながら、日本はインターネット革命の波に乗り遅れました。2007年にYouTubeが日本へ上陸した際、私は民放各局に強く主張しました。「インターネットは、地球を覆い尽くし始めており、東京タワーから電波の届く範囲とは比較にならない広さで情報を発信することができる。一刻も早く、YouTubeをプラットホームにして全世界向けのインターネットTV放送を始めるべきです!」。当時は皆さん、キョトンとしていましたね。

 インターネットが地球を覆い尽くすということは、地表に中心がないということです。インターネットなら、今自分がいるところが中心となり、そこから全世界に向けて瞬時に発信することができます。また、それは「ブロードキャスティング」ではなく、「ナローキャスティング」だと思いました。一人ひとりが見たい映像を、一人ひとりに向けて発信する時代の到来。プラットフォーム、アプリケーション、コンテンツというレイヤーからなるビジネスモデル「スマートテレビ」に移行すべきだと、民放各社に訴え続けました。

 4K・8K・有機ELといった高画質のテレビ受像機の話ではありません。インターネットにつながった新しいビジネスモデルの話です。今まさに、NetflixやHuluがやっていることですよね。あのとき民放連が主導して民放各社がすぐに着手していれば、日本がここまで立ち遅れることはなかったのにと思わずにはいられません。

 そして今は、その遅れを取り戻すことができる、またとないチャンスの時だと思うのです。私も微力ながら、そのお手伝いをしたいと思っています。

 (最後に、編集部から「今後取り組んでいきたいことは?」と尋ねられて)

 それはもう、「願はくは 花の下にて 春死なむ その如月の 望月の頃」(編集部注:『山家集』『続古今和歌集』などに収録される、西行法師による和歌)という心境ですよ(笑)。

 できたら、エイリアンに会ってみたいですね(編集部注:村上氏が人工知能に関心を持つようになるきっかけとなった映画『2001年宇宙の旅』にちなんだ発言)。

 すでに地球にいらっしゃるはずだと、おもっておりますので。

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