マーケターズ・ロード 足立光 #01

日本マクドナルドCMO足立光氏が、P&Gで身につけた「強さ」とは

私がP&Gという「無名のベンチャー」に飛び込んだ理由

 私自身がP&Gを選んだ理由はいくつかありますが、最も大きな理由としては、大学で学んだマーケティングに強い興味を持っていたことが挙げられます。

 「人の心に影響を及ぼし、具体的に行動を変える」

 非常にエキサイティングであると同時に、ビジネスの基本でもあります。政治も宗教もエンターテインメントも、マーケティングの最たる例だと言っていいでしょう。



 とにかく「マーケティングをやりたい!」と生き急いでいましたから(笑)、入社してすぐにマーケティングを学び、実務として取り組める会社に行こうと考えると、現実的にP&G以外の選択肢はほとんどありませんでした。

 まだ「マーケティング」という言葉すら珍しい時代でしたので、当時の日本企業に、マーケティングに本格的に取り組めるような企業はほとんどなかったし、部門別採用の仕組みもなかった。残念ながら、現在でもそう多くないかもしれません。

 最初の配属がどの部門になるかわからず、運と実力があれば6~10年後にマーケティング部門に行ける可能性がある……というのは、せっかちな私には考え難い道でした。

 また、「世界のトップ企業に行きたい」という思いも強く持っていました。これには、私のバックグラウンドも大いに影響していると思います。

 父がアメリカ文化の研究者だったこともあり、幼い頃から外国の方と接する機会が多かったのです。留学経験こそありませんが、暮らしぶりも比較的洋風でした。そんな環境に影響されてか、小学生の頃にはすでに「海外と日本をつなぐ仕事をしたい」と話していたようです。外向き志向が、そもそも強かったのですね。   





 入社後は、ヘアケアカテゴリーを2年間担当したのち、紙おむつ「パンパース」および大人用紙おむつ「アテント」(2007年に大王製紙へ事業移管)のブランド担当を経て、日本における新製品開発部門の第1号のマネージャーも務めました。その間、営業研修として山形県の卸売・小売店を担当させてもらったり、広告クリエイティブへの理解を深める目的で電通関西のクリエイティブ局へ半年間出向したこともありました。

 日本人として初めて赴任した韓国では、当時苦況に立たされていたヘアケアブランド「パンテーン」を担当。このように、8年(日本で6年、韓国で2年)という短期間に、実にさまざまな経験を積ませてもらいました。
  
 ひとつ印象的なエピソードを挙げるとすれば、「アテント」を担当していた時のこと。   
 

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