マーケターズ・ロード 足立光 #01
日本マクドナルドCMO足立光氏が、P&Gで身につけた「強さ」とは
窮地を脱する、最初の経験を積む
「アテント」は当時のP&Gにとって重要な“稼ぎ頭”だったのですが、ユニチャームの「パンツタイプ」が登場してからというもの急速にシェアを奪われ、窮地に陥っていました。そこで私がとった戦略は、(当時のP&Gが比較的弱かった)「パンツタイプ」に参入して対抗するだけではなく、(勝てない場合を見越して)新たなプロダクト・ポートフォリオをつくり、そこを徹底的に強化することでした。つまり、「尿とりパッド」など、競合が少ない周辺領域を攻めていったのです。
P&Gとしては、紙おむつというメイン商材での挽回を望んでいたわけですが、ブランドが圧倒的に劣勢にある中、紙おむつだけでは闘えないと判断しました。
紙おむつは、テープタイプ(寝かせた状態で履かせるタイプ)とパンツタイプとで仕様が大きく異なるため、遅れて参入してシェアを奪うことのハードルがあまりに高かったのです。会社としての方向性とは異なりましたが、苦況をなんとか脱しようと打ち出したこの新しい戦略は、一定の成果に結びついたと思います。
比較的調子のよかったヘアケアブランド「リジョイ」を担当したこともありましたが、危機的状況に陥っていた「パンパース」「アテント」、韓国で担当した「パンテーン」と、在籍中はとにかく修羅場続きでした。大量に抱えた在庫を、いかに費用をかけずに廃棄するかということを真剣に考えたりもしましたね(笑)。しかし、私にとってはそうした状況が「楽しかった」。
何十億、何百億という規模のビジネスを、入社2~3年目の少数メンバーで動かしていくことには、やはり強い「やりがい」や「責任」を感じてました。それに、施策の結果がすぐに売上に反映されるのを目の当たりにすることに、何とも言えずわくわくしていた、というのも本音です。