「広告維新伝」 広告人生43年とインターネット広告30年史 #06

広告維新伝【第6回】キリンビール担当として実現した、アナログ時代のPOE施策

アドパーソン、マーケターに必要なのは「アウトプットのイメージを想像する力」

 首都圏の10代女性の間でブームになった「ローントビー」キャンペーンは、ヤングパラダイスに新しいリスナーを呼び込んで聴取率を上げたので、僕はニッポン放送から企画賞という賞をいただいた。この年は、優れたキャンペーン(というより「こんな仕掛けよくやったね」キャンペーン)として、キリンさんの宣伝部長が講演する際の題材もこの話ばかりだった。

 「あんな仕掛けたいへんだったでしょう?」とみんなに言われたが、実際本当にたいへんで、手作りそのものだった。今の人にとっては昔話になるが、当時はまだプッシュホンも普及しきっていなかった。協力してくれた電話設備屋がすごく面白がってくれて、ダイヤル式でも自動音声応答(分岐)ができるように一緒に試行錯誤した。

 ダイヤル式の電話では、ダイヤルを回すと番号ごとに異なる音の波形が現れる。その波形をオシロスコープで観察し、さらに積分して面積を数値化すれば、どの番号を回したかが判別できる。これでプッシュホンと同じように、入力された番号に応じてコンテンツを分岐させていこうとトライした。しかし、0と9だったか、読み取り誤差が少しだけ許容範囲を超えて、この技術は日の目を見なかった。

 後から考えれば、デジタルで簡単にできることをアナログ時代に試行錯誤した経験は、僕にとって貴重なものだったと思う。今では当たり前のことを、当たり前じゃない時代にやろうとしていた。しかも、それを面白がってやっていた。

 そういうことが、今でもそこらじゅうに転がっているはずだ。なんでも興味をもってトライしてみるといい。AI時代は何がどうなったら面白いのか、それを想像する力が重要なんだと思う。アウトプットのイメージを想像する力があれば、生成AIがなんとかしてくれるんだから。

 ただ、プロセスを試行錯誤することの楽しさがなくなるかもしれないのが、ちょっと残念だけれど。

 さて、次回も、キリン担当として経験した「代理店ビジネス以外」のプロジェクトを振り返ろう。会員制の通信販売事業「キリンカルチュアクラブ」だ。(つづく)
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