マーケターズ・ロード 足立光 #04
「組織を動かすには、感情→結果→KPIの順番が重要」日本マクドナルドCMO足立光氏
2018/05/14
窮地に陥った企業を起死回生させる“劇薬”でありたい
2015年、現職である日本マクドナルドのマーケティング本部長に至りました。なぜ日本マクドナルドを選んだのか。これまでの経緯からお察しいただけると思いますが(笑)、当時のマクドナルドが業績不振に苦しんでいたからです。
あえて厳しい環境に身を置こうとする、“修羅場好き”の私らしい選択と言えるのではないでしょうか。
P&Gに始まり、これまでに私が参画したのは、家族や友人が「絶対にやめた方がいい」と強く反対した企業という点で共通しています。マクドナルドのマーケティング責任者は、私の就任前の10年間で、なんと私が9人目でした。交代に次ぐ交代の末に、僕がやってきたというわけです。もちろん、友人も家族も、昔マクドナルドに在籍していた友人さえ「やめた方がいい」と言いました。
なぜ私が「厳しい状況の企業」ばかりを選ぶのか。
それは、その企業が本気で変化を必要としているからです。企業というものは、本当に切羽詰まっていると、大きな変化を短期間に起こせる可能性が高い。逆にそれほど困っていないと、何だかんだと理由をつけて変化に対して抵抗するものなのです。企業に対してきちんと貢献するため、つまり変革を成し遂げるために、私はあえて厳しい状況の企業を選んでいます。
以前、あるヘッドハンティング会社の社長さんに言われたのですが、私は“劇薬”なんです(笑)。
健康な企業にとってはかえって身体に悪いかもしれないけど、瀕死の企業にとっては特効薬になり得る。私にとっては、そういう環境のほうがやり甲斐を感じられるし、明らかに変わっていく様を目の当たりにすることに喜びを感じるのです。
変革のために組織をどう動かしたのか
とは言え、変革は私一人で実現できるものではなく、チームメンバーの力が不可欠です。つまり、変革を起こすためには、ゴールに向けて効果的に「組織を動かす」ことが求められます。私は、組織を動かすには「感情」「結果」「KPI」という3つの要素が必要で、かつその順番が鍵になると考えています。
なにしろ、10年間で9人も責任者が変わっていますから、当時のマクドナルドのメンバーは私に対して「この人、いつまで持つかな?」と思っているわけです。そこにいきなり新しい「KPI」を持ち出しても、彼らが信じて動いてくれるはずはありません。
そこで、まずは「感情」です。わかりやすく言えば、激しい飲み会をすること(笑)。飲み会でなくとも、テニスでもハイキングでもいいのです。オフィス外でさまざまな接点をつくり、仲間になる必要があります。「こいつが言うなら、何とかやってやろう」と感情で動いてもらえるようにするのです。
その次は、「結果」。アーリー・リザルトと言っているのですが、早い段階で「結果」を出す必要があります。すると、「こいつの言う通りにすれば、何とかなるかもしれない」と思ってもらえるようになるのです。
マクドナルドで言えば「名前募集バーガー」や「チョコポテト」など、就任半年以内には、小さな成功をいくつかつくることができました。そうすると、その後に実行する、より大きな施策が動かしやすくなります。
そして最後に「KPI」。人間というのは、基本的に「やりたいこと」と「やらなければいけないこと」のどちらかしかやらないものです。今までやっていなかったことなんて、やりたくないというのが本音です。そこで大切なのが、新しい方向性を向いたKPIを設定し、定期的かつ頻繁にフォローすること。
例えば、マクドナルドで言えば、ソーシャルメディアの活用が挙げられます。
当時はあまり活用されてなかったソーシャルメディアに対してKPIを設定し、毎週毎週、口うるさく、進捗を聞いてフォローすることで、ソーシャルメディア活用は「やらなければいけないこと」へと変わっていきました。KPIを設定することで、システマチックに、メンバーに同じ方向を向いてもらうことができるのです。