デジタルマーケティングで市場拡大を目指す #08
理想のWebマーケティングチームは、どうすれば実現できる?【ユーキャン 鳥羽渉】
解決手段としてマトリックス型組織の試行
これらの課題を解決するために検討したのが、部門横断チームの編成です。イメージとしてはマトリックス組織のようなものですが、会社組織としての枠組みはこれまで通りとし、横串のプロジェクトチームを部門や担当を横断する形で設定しました。
形としては以上ですが、肝はそのチームの分け方にあります。
まずチームの目的となる担当商品は、商品ジャンルでざっくり分けるのではなく、デモグラフィックなどの顧客特性からグルーピングを見直し、かつ担当商品数ではなく年間の目標売上金額が各チーム同等となるように編成しました。
これにより対象ターゲットが明確化し、チーム分けして施策を検討、実施する合理性を担保しました。全体目標へコミットしやすく、ほかチームとの競走と共創の意識が出るのではと目論みました。
また、メンバー編成も集客と制作の大きな部門メンバーが分散するのは当然として、冗長化した各機能担当のメンバーも重複しないように配置しました。例えば、運用系広告担当の3名はそれぞれ異なるチームに配置するなどです。これにより企画が多様化するとともに、企画を実施する際の機能担当側との情報共有もスムースになります。
そして各チームのリーダーにはマネジメント経験を積んで欲しいメンバーを配置する事で、その機会の創出を図りました。改めて文書化すると、我ながらけっこう頭を使ったものだなあ、という感じです(笑)。
マトリックス型組織の試行結果とこれから
もちろん大事なことは、その結果です。2018年に試行した結果、良い効果と新たな課題が生じました。良い効果としては、目論んでいた「情報共有」が促進できたことです。完全に払拭した、とまでは言えない状況ではありますが、少なくともそれ以前よりは進みました。また、これまで出来なかった施策を、従来は対象にし得なかった商品で実現できました。例えば、SEO来訪を促進するための記事コンテンツを複数の商品で展開することなどです。
一方で、新たな課題もいくつか確認できました。
まずは、チーム自体の権限設定です。準備期間が短くそこまで細かく設定できなかったということもありますが、売上などに責任を持たせたチーム編成をするのであれば、予算も含めた権限をきちんと設定し、その範囲で自由に動かさなければ、当初目標の達成は難しいものでした。
業務の優先度設定も必要でした。マトリックス型のチームを編成しても、仕事が減る訳ではありません。調整をしなければ、純粋にこれまでの業務にマトリックスチームの仕事がオンされるわけで、そこへの配慮が不足していました。結果として、通常業務との優先度設定が分かりづらくなったり、繁忙期にはマトリックスチームとしての行動がほとんど行えなかったり、目指していたほどの活動が出来ませんでした。
商品ごとの分類も十分検討したつもりでしたが、商品需要の中長期的な状況や、直近のトレンド、新商品の売上目標など、細かい需給の予測が不足しており、チーム編成時から設定していた毎月のレビューも、最初から目標値との乖離が大きくなり、チーム間の競争という目論見は完全に外れました。
ただ、これらの問題点が確認できたため、今後に向けて一定の予算を確保することや、既存業務との切り分けは打合せ回数やチーム業務に充当する時間の制限を設け、リソース配分の検討材料を提示することで、マネジメントを行使する幅を設けるなど、ポイントを押さえた改善をすることで、今後も継続できるのではないかと考えています。
チームビルディングについては、マーケティング担当者の権限では制約も多く、お悩みの方も多いでしょう。ここまでご覧いただいたらお分かりかと思いますが、もちろん私もその一人です。成果へのコミットとモチベーション維持、個々人の負荷をバランスさせたチームビルディングは、今後も継続的に取り組むことで解決を目指していきたい課題です。
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