マーケティングの現場から考える「5年後の実際」 #02

私が流行りの「One to Oneマーケティング」に抱いた違和感の正体 【LIFULL 菅野勇太】

One to Oneの「違和感」の正体が見えてきた

 私はアンケートメールというごくありふれた施策を通して脳天に電流が走る衝撃を覚えつつ、ここ数年の悩みを解決して大きな脱皮を遂げるべく、新たな課題を瞬時に設定した。

 私たちはユーザーの要望を能動的に引き出す努力が足りていなかったのだ。ユーザーに率直に聞く、その勇気を持つべきだ。その傾聴のプロセス抜きに行動ログから仮説を立て、一足飛びにメッセージを自動配信するという解決策へと進んでしまう。

 それが私が考える、今のOne to Oneに潜む違和感の正体だ。

 近年のAIによるCRM、MAの部分的な機能強化に対して違和感を抱く理由もまた同じだ。それは、コミュニケーションが一方向性のままであるということ。双方向的な対話の中でユーザーから引き出した声に立脚していない。ユーザーの声を聞かずにAIによってOne to Oneっぽいものができ上がったところで「セグメント配信の域を出たのか」という疑問である。

 ユーザー理解のために大量のデータを突合することに大枚をはたくのではなく、目の前のユーザーに素直に聞けばいい。アンケートメールはあくまでも一例だが、ユーザーは自らの声を企業に向けて発信する用意が常にできている。

 臆することなくユーザーの要望を引き出す、傾聴する、即時回答する。この対話を不特定多数のユーザーと同時に行う。私はこれを単一のCSソリューションとしての各論に収めるのではなく、One to Oneマーケティングにおけるパラダイムシフトとするために挑戦すべき課題として設定する。新しいコンセプトと具体的な方法論については、次回以降の連載寄稿で深掘りしたい。

 ところで、「独りよがりなプレゼント」で失敗しないためには、どうしたらよいのだろうか。会話の比率は相手が8割でいい。傾聴し、自分が提供できる選択肢を前広にしながら、デートプランを決めることではないだろうか。
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