マーケティングの現場から考える「5年後の実際」 #03

誤解や議論も多い「CRM」 AI時代に相応しい価値とは何か【LIFULL 菅野勇太】

私が「One to Oneマーケティング」にこだわる理由

 蛇足ではあるが、私がCRMおよび「One to One」にこだわる理由は「LIFULLだから」この一言に尽きる。

 「あらゆるLIFEを、FULLに。」



 独自のライフデータベースの構築と、あらゆる人々の暮らしや人生を豊かにするソリューションの創造が至上命題だ。“あらゆる”に近づくために、日夜パーソナライズ技術を追究している。

 当然ながらOne to Oneマーケティングの有効性や重要性の度合いは業界や商材によって様々だ。私はBtoBが専門ではないため、業界ごとのOne to Oneの向き不向きなどは論じられないが、今向き合っている市場についての考え方は、類似する業界で働く多くのマーケターにとっても役立つはずだ。

 就職・結婚・出産といったライフイベントと、それに関連する住み替え・保険などの領域は、個々人の状況が多種多様で選択肢が多く、大きな意思決定が伴い、発生頻度が少ないといった特徴がある。

 検討初期段階の川上から自分なりの基準を決めておかないと選択肢を絞れないが、川上になればなるほど自らの要望を言語化しにくい。こういった領域はコンシェルジュのように気が利く1to1対応がサービスの肝になる。

 不動産の例でいうと、近年まさに百人百様な世界になりつつある。

 「いつかは庭付き一戸建て」に全く感化されることなく、築30年の中古マンションを購入して自分たち「らしく」リノベーションする夫婦。シェアハウスでのコミュニティ生活に惹かれる若手社会人。わずか3畳の狭小賃貸物件でも快適な暮らしを見出す学生。

 人々のライフスタイルが均質なものではなくなり、住まい方の選択肢も人々の価値観の多様化に合わせるように複雑かつ急速に変化している。そして不動産は日常でトライアル消費ができないワンショットでの勝負だ。

 特に住宅購入の意思決定支援は、短期的かつ類推ベースの“うわべだけ”のコミュニケーションのままでは革新は起こせない。中長期的かつユーザーからの確定情報としてのインプットをベースとしたコミュニケーションに変えていく必要がある。

 CRMの流行り廃りとは関係のないところで、会社として、事業として追及しているビジョンであるからこそ、否定の余地なく「One to One」の実現に盲進する覚悟なのだ。

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