マーケティングの現場から考える「5年後の実際」 #03

誤解や議論も多い「CRM」 AI時代に相応しい価値とは何か【LIFULL 菅野勇太】

今後、起こり得る2通りの進化とは

 今後、「One to Oneマーケティング」は、ディープラーニングの活用ノウハウの蓄積とマシンスペック向上によって、2通りの進化が同時進行する。

 それは、「一方向性」か、「双方向性」かだ。

 前者は、既存の延長線上で行き着くパーソナライゼーション。人間の頭で考えられる限界を遥かに超えた無数の仮説を勝手に立てて勝手に検証する。「なぜうまくいったのか?なぜ失敗したのか?」という人間の解釈を必要としない、無数の仮説検証の自動化だ。

 例えば、人の介入を許さないロイヤリティプログラムの稼働は、容易に想像ができる。ロイヤル化という目的と、オファーする素材のストック(キャンペーンなど)さえあれば、あとは誰にどんなオファーをすれば最もリターンが高まるか、キャンペーン特典の在庫管理などもひっくるめてAIが判断する。



 予め投資に回していい原資を決めてAIに運用を任せる投資信託のイメージだ。ロイヤリティプログラムの自動化は、マーケターを「シナリオ設計」という作業から解放し、キャンペーンの企画に専念させられる。

 これは「CRM1.0」の最終章なのか、また違った次元に進むのかはわからない。ある程度、ハードウェアの進化にも引っ張られる世界だ。また、最適化アルゴリズムの精度は、データの量に比例する。いわば、大量の顧客を抱える限られたプレイヤーのみが実現できる領域に留まるかもしれない。

 ちなみにこの発想はアドテクの世界では当たり前のように実装されている。確かなことは、これは机上の空論ではなく、かなり現実味のある施策であるということだ。

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