Adobe Summit 2019 #01

Adobe Summitに見るこれからのマーケティング【奥谷孝司 現地レポート】

 

アドビが描く「顧客体験マネジメント(CXM)」とは何か



 

 これほどの規模のB2Bイベントが他にあるだろうか。筆者は初めて米国・ラスベガスで開催される「Adobe Summit」に参加してきた。マルケト、マジェントも傘下に収め、デジタルマーケティング戦略推進、消費者行動理解、顧客体験創造に不可欠なツールとして進化するアドビ製品のお披露目の場だ。今年の参加者数は1万7000人を超え、日本からの参加者も200人以上と盛り上がりを見せている。

 本Adobe Summitを筆者は3日間に渡り体験してきた。2011年前職において現在のAdobe Analyticsの導入を皮切りにお世話になってきた同社であるが、確実に進化しているアドビ製品、本イベントの見所を、前回のSXSWレポートに続いて、今回も2回に渡ってお伝えしたいと思う。初回は初日のキーノートセッションからの学びを紹介しよう。
 

Customer Experience(顧客体験)話から始まった


 久しぶりにアドビ製品の最新情報に触れた筆者は、Adobe Summitの初日のキーノートセッションから驚きを隠せなかった。

 なぜなら、失礼ながら顧客体験の話からこのサミットがスタートするとは想像もしていなかったからだ。「Changing the World through Digital Experience」というメッセージが現れ、今までの印象であったWeb Analyticsツールの提供、Photoshop、Illustratorを中心としたクリエィティブソフトウエアに優れた企業イメージは一掃された。

 アドビが顧客体験をデザインし、「デジタル体験を通じて、世界を変える」と宣言している。これはチャレンジングなメッセージだ。

 過去のAdobe Summitを改めて学びなおしてみると、アドビは過去のAdobe SummitにおいてもExperienceをという言葉を重視していたようだ。しかし、筆者の印象では、デジタル体験の創造と理解だけに特化している印象がある同社がどこまでネットとリアルを融合した「真の顧客体験」を考えているのか?その実現の程度はどの程度なのか?そのような疑問が頭をよぎったが、アドビCEO、シャンタヌ・ナラヤン氏の話を聞くことで、その戦略理解が深まり、改めてマーケティング活動において大切な良質な顧客体験の創造に寄与できるものになりうる可能性が見えてきた。


 

真の顧客時間設計の実現をサポートするアドビ製品群の広がり


 「Personalize experiences」のメッセージとともに、ナラヤン氏からは「Reimagine the Customer Journey」=顧客時間の再考と、DiscoverからTry, Buy, Use, Renewへとつながる自社のカスタマージャーニーが提示された。

 また、購買後の時間の可視化としてUseとRenewに力点を置いたプレゼンテーションが行われ、Retention、Customer Engagement、これからのカスタマージャーニーの設計においてFrictionless(シームレスとほぼ同義)の重要性もキーワードとして盛り込まれてきたことも注目に値する。

 この「Frictionless(フリクションレス)」という言葉は、Adobe Summitの他のセッションでも多くのCDO/CMOが使っていた言葉であり、現代のマーケティングにおいて複数のデバイス、タッチポイントで同じ体験を迅速に顧客に提供することがFrictionlessの実現につながる。その重要性が強調されたことが、アドビはもちろん、アドビ製品を駆使する多くのマーケターの進化と言えるだろう。

 多くのセッションにおいてアドビユーザー企業がオンライン、オフラインを問わずデジタル体験を通じて経営戦略の実現し、マーケティング戦略の高度化、個客理解をプライバシーの問題解決をしながら実践することができる環境づくりに腐心している現状が理解できた。その象徴的な事例として、Amazonの攻勢からなんとか経営再建を成し遂げたBEST BUYの事例がキーノートセッションで紹介された。

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