Adobe Summit 2019 #01

Adobe Summitに見るこれからのマーケティング【奥谷孝司 現地レポート】

CXM(Customer Experience Management)の実現に挑戦する- Adobe Experience Cloudの進化


 「People buy Experience not Products」=「お客さまは製品を買っているのではなく、体験を買いにきている」

 このメッセージを最も体現し、アドビ製品を活用したマーケティング、経営戦略の実践事例としてBEST BUY CEO Hubert Joyが登壇した。



 7年前は経営危機に瀕していた同社。店頭への強い依存から、Amazonに消費者を奪われてきた。改めてお客さまの買物体験においてOnlineの重要性を認識し、現代の購買体験がOnlineから始まることを認識した上で、差別化としての店舗での買物体験をより豊かにする。

 この戦略を基礎とし経費削減、社会貢献を行いながら、Reinventing Company(企業再生)を行い、企業理念であるEnrich Your Life with Tech(テクノロジーを活用して人生を豊かにする)を実践し、経営再建を成し遂げた。

 かつては、マーケティング予算の8割をマス広告に使っていたが、現在では8割がDigital Marketingにシフトをしている。その上で店頭における買物のサポートや、有料ではあるがHome Advisorによるサービス提供、BOPIS(店頭受け取りサービス)を導入。店頭の強みを最大化し、さらなる挑戦としてお客さまへの真のソリューション提供までを検討できるレベルに企業は進化し、生き残りを図った。

 Joy氏は、「企業経営のデジタル化は不可欠である」と言う。また、同時に「店頭での体験提供は資産でもある」とし、オンラインとオフライン行き来するカスタマージャーニーは複雑化していることを前提に、Machine Learning、AIなども活用して、顧客理解に努めていくのが彼の経営戦略なのだ。

 このようなリアルをビジネスの中心に据える企業のデジタルシフトのトレンドは米国では顕著である。日本は、まだここまでのデジタルシフトは起こっていないが、アメリカからマス広告がなくなったわけでも、その効果が軽んじられているわけではない中で、デジタルを活用した顧客体験の提供とデジタルのタッチポイントを中心とした顧客理解のスピード化の重要性が増していることに注目すべきであろう。

 そういう意味では、アドビ製品のようなデジタル体験設計プラットフォームを中心に据えたCustomer Experience Centerづくり、マーケティング戦略本部構築の実現は近いかもしれない。

 様々なオフラインデータを取り込める環境整備、マルケトを活用したB2B CRMから、マジェントを活用した迅速なEC環境構築。良いかどうかはわからないし、これだけが唯一のマーケティング戦略とは言わないが、デジタルに振り切る、アドビ製品を通じての全体のマーケティング戦略を運用、管理する企業は、今後も世界で増えていきそうだ。

 それがまさにアドビが提供するAdobe Experience Cloudが果たすべき使命であろう。その萌芽を感じる個別事例も本Summitで多く語られていたように思う。このあたりは次回まとめてお伝えしたい。

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