Adobe Summit 2019 #02

日本企業に再度、確認してもらいたい「基本の徹底」Adobe Summitに見るこれからのマーケティング【後編】

当たり前だがなかなかできない、戦略ありきのオムニチャネル


 オムニチャネルのセッションでは、米フィットネスクラブ大手Fitness 24とオーストラリアで複数ブランドのシューズ販売を行うAccent Groupの事例が大変興味深かった。彼らに共通している点が2点あった。それは、第1にfrictionless(=シームレスと同義)な顧客体験づくりを徹底して重視していること、最後に経営戦略に基づき地に足のついOmni-Channel戦略の実現が挙げられる。
 
画像はイメージ Ⓒ123RF
 まずfrictionlessな顧客体験の実現に関してAccent Groupは欧米では顕著なジェネレーションZ世代との繋がりを重視しており、携帯が当たり前のこの世代はベビーブーマー(戦後生まれ)よりも1.7倍オンラインでの買い物を行うことを踏まえたカスタマージャーニーの設計を進めているという。

 彼らは、重要なタッチポイントを「1.Digital」「 2.Flagship store(旗艦店)」「3.Metro(都心店) 」「4.Regional(地方)」とし、400店を超える店舗、16のECサイトにある在庫の可視化を進め、在庫削減にもオムニチャネル戦略が寄与しているという。

 その主な手法は、「BOPIS(Buy Online, Pick Up In Store)」に当たるClick & collect、店頭出荷に当たるClick & dispatch 、当日出荷だという。そこにECや店舗体験が組み合わされ、顧客データの収集と分析、それらの上に構築された仮説を実行するCRM & Loyaltyプログラムを運用し、オンラインで可視化される顧客ニーズを逃さない仕組みを構築している。

 彼らはなぜここまでやるのか?それは同社が「現代のお客様の流れ」に対して、当たり前とも言えるが、新しい視点を持っているからだ。その新しい視点とは、前編にも書いた「人の流れとしてのWebの重要性」だ。店舗にも多くの人は来るが、それ以上にWebサイトに人が来る。

 だからこそ、データドリブンかつデジタルドリブンな体験提供が重要になる。これだけの店舗展開をしながらも未来を見据える同社は店舗の空洞化を見据えながら、顧客体験としてのポップアップストアの重要性、前回言及したデジタルコンテンツの迅速な提供を目指すcontent velocityへの対応を進めているのだ。

 「VMD(ビジュアルマーチャンダイジング)を変えるのと、facebook adを変えるのでは時間軸が違う」店舗はExperience Center(体験の場)としてこれからも必要だが、Webを活用したDiscovery-Center(発見の場)も重要だという。最後に顧客体験の提供において大切なことは「Excellentが重要でperfectは、必要ない」とも言っていた。経営戦略に基づいたオムニチャネル戦略のベストプラクティスとは、まさに同社のような事例を指すのであろう。

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