PHOTO | Twitter Japan
顧客基点の「ソーシャルメディア戦略」 #01

ソーシャルメディアは担当者の個性を披露する場ではない、大事なのは握手をするような距離感【風間公太】

 無印良品のFacebookやTwitter、Instagramなどのソーシャルメディア戦略を担っていた、顧客時間の風間公太氏による連載「顧客基点のソーシャルメディア戦略」がスタート。企業のソーシャルメディア担当者が抱える悩みを解決する手がかりを提供していきます。第一回は、「能動的な行動を促すためのソーシャルメディア運用」になります。
 

企業は今、ソーシャルメディアで何を伝えるのか


 Twitter、Facebook、Instagram…。いまこの瞬間も多くの人々が「旅行中の風景」「子どもの笑顔」「2時間並んで食べたスイーツ」「話題のニュースに対する私見」などをソーシャルメディアに投稿している。時節的なイベントの際はそれがさらに加速されるが、先日の平成から令和への改元も記憶に新しい出来事だ。この時、Twitterでは改元関連のツイートが1200万を超えたという。
 
出典:https://twitter.com/TwitterJP/status/1123243404907859969
 改元はかなり稀な出来事ではあるが、都心の満員電車のように無数のコンテンツがすし詰め状態のタイムラインに、ソーシャルメディア企業アカウント担当者として、どんなコンテンツを投稿すればフォロワー/ファンの興味を惹くことができ、自社の事業に貢献できるのか。

 筆者は前職の無印良品で約10年間企業アカウントの運用を経験する中、さまざまなセミナーや企業内勉強会など講演の場で、多くの運用担当の皆さんとも接してきた。アカウント運用の最前線に立つ皆さんから質問を受ける機会もあったが、それらを大別すると「顧客との距離感が難しい」「投稿するコンテンツが無く苦労している」「効果測定の方法がわからない」の3つに集約される。

 こういった運用担当者ならではの悩みを解決する手がかりになるような知見も、この連載で共有できればと考えている。
 

ソーシャルメディアは、担当者の個性を披露する場ではない


 今回は、「顧客との距離感が難しい」について考えてみたい。投稿したコンテンツがリツイートされたり、いいね!されたいと望むのは、運用担当者として当然の欲求である。とは言え、反応数の多さを求めるあまり、その企業が提供する商品やサービスとかけ離れた内容を投稿したり、親しみを持ってもらいたいからとブランドの文脈を無視したキャラクターを立てて運用したりするのは本末転倒だ(かく言う筆者も若干の心当たりがあることを告白しておかなければならないが…)。

 日本国内での企業アカウントの状況を見回すと、特にTwitterの運用事例として話題になるのはカジュアルな雰囲気で運用を行なっているアカウントが多い。

 企業ソーシャルメディア黎明期のアカウントではNHK広報局(@NHK_PR)や東急ハンズ(@TokyuHands)、昨今では株式会社タニタ(@TANITAofficial)やSHARP シャープ株式会社(@SHARP_JP)などが代表的なアカウントだろうか。

 運用担当者の個性を活かす方法は手法の一つかもしれないが、この手法をソーシャルメディア運用の成功事例として上司などから強要された運用担当者は苦痛でしかない。誤解を恐れずに言えば、このようなアカウントはあくまでも特殊能力を持った担当者による「特例」として括るべきであり、「担当者の個性を活かした運用=ソーシャルメディアの成功パターン」と考えてしまうのはあまりにも短絡的で、容易に真似できるものでは無い。

 天才的な運用担当者がいたり、個人商店であれば、個性を前面に出す運用方法も選択肢となり得るが、ある程度の規模の企業ならば、担当者の部署異動や退職等の可能性も考えられるため、一子相伝の秘技にならないような中長期的な視点で運用スタイルを築く必要がある。

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