顧客基点の「ソーシャルメディア戦略」 #02

あなたの会社にも、スターバックスの「フラペチーノ」はきっとある

その常識は世の中の常識か?


 さて、ここで改めてソーシャルメディアで投稿するコンテンツ選びについて考えてみたい。企業アカウント運用担当者の共通の悩みとして、「投稿するコンテンツが無くて苦労している」といった声を聞くことも多いが、本当にコンテンツが無いのだろうか。

 前回、「自社のファンは、こちらが想像するほど自社のことを考えてはいない」と記したが、実はこの考え方を持つことが、コンテンツ探しの視野を大きく拡げるきっかけになる。意外と見落としているのが、「社内では当たり前と思っていることが、世の中の当たり前ではない(伝わっていない)」ということだ。
 
MUJI 無印良品グローバルアカウントより(現在この投稿は非公開)

 筆者が無印良品のアカウント運用担当者だった時の事例を紹介しよう。定番商品のスニーカーの製造工程を紹介する動画をグローバル向けのFacebookアカウントで投稿したところ、10万シェア、5千万人リーチ、動画再生数1,800万という、驚異的な反応数を記録した。

 コメントも3,000件近く寄せられていたので、何かネガティブな出来事が起こっているのではと最初は慄いたが、コメントを読むと「こんなに手づくりの工程が多いのか」「もっと機械によって自動製造していると思っていた」「品質の高さが納得できた」など、製造工程の中で想像以上に人間の手作業が関与していることに対しての驚きの内容が大半だった。

 日本国内と比較すると、まだブランドの理解度が薄い海外の顧客ならではの反応かとも思ったが、後日、日本国内向けアカウントで同じ投稿をしたところ、こちらも通常の反応数を遥かに上回る結果となった。

 このような商品の製造工程は、ものづくり企業にとっては日常的な光景になりすぎている。そのため、上記のコメントのような価値に気づかず、それが顧客に受け入れられるコンテンツになるという発想が生まれなかった。決して多くの反応を得ることを確信して投稿したコンテンツでは無かったので、筆者の目利き力もまだまだ未熟だったと認めざるを得ない。

 言い方を変えると、どんな企業でも、社内に存在する世の中に伝わりきれていないコンテンツを発見する「目利き力」を備えた人材は、ソーシャルメディア担当者候補として大いに期待できるだろう。

 筆者も企業アカウント運用のお手伝いをする中で、「たいしたことでは無いですが」との前置きでお話しいただく内容が、一顧客にとってはとてもたいしたことであり、それが顧客に刺さるコンテンツだと感じる場面に数多く遭遇する。

 大事なことなので、もう一度記すが、「社内では当たり前と思っていることが、世の中の当たり前ではない」。顧客は自社のことをあまり知らないのだと自覚し、それを悲観的に受け止めるのではなく、より関係性を深めるきっかけがまだまだあるのだと前向きに捉える。運用担当者の皆さんには、この視点で改めて社内を見回してもらいたい。

 固定観念のフィルターを外して映る光景の中に、きっと見出すことができるはずだ。あなたの会社の「フラペチーノ」を。
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