マーケティングの現場から考える「5年後の実際」 #04
テクノロジー先行か、課題先行か。優秀な店舗スタッフの「AI化」が頓挫した理由から見えたこと
失敗を乗り越え、新たな決断へ
そもそも究極的に個別化されたニーズに対して、過去の学習データが適応できるかが怪しい。AIによる学習には大量の過去データの蓄積が必要という絶対的な考え方が、自らの内なる固定観念となって染みついていたことに気付いた。
そこで、発想の転換を試みた。過去データの活用ではなく都度データの活用。ユーザー毎にゼロからその場で質問し、回答を集めて提案を返しながら提案の精度を調整するというアプローチ。過去データの整形という途方もない作業について考えることを一旦止めたのだ。
必要なのは、短いワンセッションの中でユーザーから多くのフィードバックを得るためのUX。プラットフォームとしては双方向性の特徴を最大限活用できるLINEとし、対話のキャッチボールが長く続くようなゲーミフィケーション要素や、ユーザーの「実現したいライフスタイルを汲み取る」演出も取り入れることが大事だ。
ここでAIに課題を設定するならば、まず人に変わって無数のユーザーに無数の質問を投げかけることだ。ユーザーから引き出したフィードバックを元にどのような質問の筋がいいかをリアルタイムに学習し、次に何を提案すべきかを決定す。
こういった方法論の概念実証として、今現在に続く対話型コンテンツのプロトタイプ開発に至る。
アドバイザーという人間の暗黙知を形式知に置き換えてAIが活用することはできなかったが、「究極のOne to Oneマーケティング」という解決したい課題は変わらない。多様化するユーザーのニーズにオーダーメイドで対応したい。曖昧なニーズを具体化・顕在化することのお手伝いがしたい。
この取り組みは開始して半年ほどが経ち、まだ道半ばではあるが日夜アップデートを続けている。このプロジェクトの成果は、この連載記事の中でも今後も語ることが出来れば幸いだ。
次回は少し視点を変えて、次世代のマーケターに求められるスキルについて深掘りしたい。
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