顧客基点の「ソーシャルメディア戦略」 #03

ソーシャルメディアは「顧客の満足度」を可視化してくれる装置【風間 公太】

ソーシャルメディアは「ポジティブな声」との出会いの場


 一方で、定量的ではなく、定性的な効果測定も考えてみよう。

 ここで声を大にしてお伝えしたいのは、「ソーシャルメディアは顧客のポジティブな声を可視化する装置」でもあるということだ。

 意外に思われるかもしれないが、企業は顧客からのネガティブな声を日常的に聞いている。商品の不具合、配送の遅延、店舗スタッフの不手際など、顧客からの厳しい声がカスタマーサポート窓口を中心に多く寄せられる。反対に、その企業の商品について「買って良かった」「食べたお菓子が美味しかった」「友だちに勧めたい」など、ポジティブ傾向の感想や意見が電話やメールなどで届くことは、ネガティブな声と比較すると圧倒的に少ない。

 皆さんも自らをひとりの顧客として考えたとき、企業に対するポジティブな意見をソーシャルメディア以外の手段で伝えたことは、あまり無いのではと想像する。

 筆者が2009年に無印良品のアカウントを開設した際に驚き、嬉しかったことのひとつが、このようなポジティブな声の数々だ。こちらの投稿に対しての返信としてだけでなく、顧客からの能動的なリプライ、あるいは企業名や商品名で検索(エゴサーチ)をしても、さまざまなポジティブな声と出会うことができた。同じような経験がある運用担当者の皆さんも多いのではないだろうか。



 こういった声と出会うだけでも、企業がソーシャルメディアを活用する価値は十分にある。数の増減を競うものでは無く、数値化(定量化)しにくい指標ではあるが、顧客のポジティブな声の可視化と社内共有も、ソーシャルメディアの効果測定の視点として強くお勧めしたい。

 運用担当者の皆さんは情報発信業務のみに偏重せず、週一回でも良いので、顧客のポジティブな声を集め、商品に対する声ならば商品開発担当者に、店舗スタッフの接客を評価する声ならば対象店舗に、今すぐその声を伝えてほしい。

 「そんな単純なことが必要なのか?」と思われるかもしれない。しかしながら、緊急性の高そうな声は即座に社内共有するが、ポジティブな声は(意図的では無いが)運用担当者が独り占めしてしまっている様子が散見されるのも事実で、それはとてももったいない状況だ。

 顧客のポジティブな声を社内で共有し、それによって同じ職場で働く仲間たちのモチベーションが上がる。こんな素晴らしいことはない。人は一時的な感情で怒ることはあるが、一時的な感情で褒めたりはしない。だからこそ、ポジティブな声は顧客の真実の姿に近い声であり、価値ある声なのだ。

 運用業務の中での優先度を高め、ソーシャルメディアで出会ったポジティブな声を社内で共有してみてはいかがだろうか。定性的な顧客の声が、定量的な数値目標を忍耐強く追い求める原動力になり、企業アカウント運用担当者であることにさらなる誇りと自信を与えてくれるに違いない。
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