新・企業研究 #04

アイデアからクレバーな仕掛けが評価される時代へ。レイ・イナモトが語る「日本の強みと弱み」

前回の記事:
クリエイティブやコンサルの先へ。レイ・イナモトが描く、これからのクリエイティビティ
 米国サンフランシスコに本社を置くデジタルエージェンシー AKQAでCCO(クリエイティブ最高責任者)として、NIKEやGoogleといったグローバルブランドのクリエイティブ戦略をリードしてきたレイ・イナモト氏。Creativity誌「世界の最も影響力のある50人」、Forbes誌「世界広告業界最もクリエイティブな25人」に選ばれるなど、世界的に注目を集めている。

 そのイナモト氏は2016年に独立し、ニューヨークに「I&CO(当時Inamoto & Co)」を設立。そして今年7月1日に、クリエイティブ集団 PARTYに在籍していた高宮範有氏、元アクセンチュアの間澤崇氏とともに日本オフィス「I&CO Tokyo」を立ち上げた。設立の背景について聞いた前編に続き、後編では世界のクリエイティブの潮流と、日本企業の強みと弱みについて話を聞いた。
 

広告ではないものが広告になる時代

 
レイ・イナモト氏(中央)、高宮範有氏(右)、間澤崇氏(左)。

——イナモトさんは今年、世界最大級のクリエイティブの祭典「カンヌライオンズ」でデジタル部門の審査員長を務めていました。今回の受賞作から見えてきた潮流について教えてください。

イナモト マーケティングの視点で言うと、今までの広告は日本に限らず、ビッグアイデアという言葉が使われていました。しかし、ここ2、3年で「クレバーな仕掛け」が評価されるようになったと思います。

今年のカンヌライオンズでダイレクト部門、モバイル部門、チタニウム部門の3部門でグランプリを受賞したバーガーキングの「The Whopper Detour」もクレバーな仕掛けです。
 
バーガーキングのキャンペーン「The Whopper Detour」。ワッパーが1セントになるクーポンが自社アプリを通じて、全米に1万4000店あるマクドナルドの近くでだけ受け取れる。来店数が過去4年間で最高を記録するなど、大きな成果を挙げた。

高宮 たしかに、これは5年前だったらシルバー、ブロンズといったレベルのアイデアですよね。

イナモト そう、広告のクリエイターが鼻で笑っていたようなアイデアなんです。いまは広告ではないものが広告になっている時代。メディアをたくさん買って、そこにメッセージを流すような従来の手法が通用しにくくなったように思います。



それから「DO LESS BETTER=少ないことがより良い」という潮流もあります。特にメディアはテレビ、モバイルなど選択肢がたくさんあって、さらにそのモバイルの中でもありとあらゆる選択肢があります。

 企業からすると、どれをやっても足りないので、自分たちに合ったメディアに絞って、そこで素晴らしい施策をした方が効果的になっていると思います。

ただ、今の時代は効果のあるメディアがどんどん変わるんです。5年前はFacebook、去年まではInstagram、これからはTikTokみたいに。それを追いかけていくことが大変だと思います。

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