マーケティングの現場から考える「5年後の実際」 #05

【提言】 次世代マーケターに求められる5つのスキル

④改めて、市場というものへダイブする勇気



 これはもうスキルというか勇気と言ってしまっているのだが、今の時代、テクノロジーの理解と活用にどっぷりと時間を割かなければならない焦燥感が漂っている。しかしその衝動を一度おさえて、改めて「市場」というものに深くダイブする時間を意識的に取らなければならない。 

 具体例を紹介する。当社で運営する住み替え相談カウンター(リアル店舗)の「LIFULL HOME'S住まいの窓口」では、主力のオンライン集客においてこれまでデジタル広告のターゲティング設計に多くのエネルギーを費やしてきた。しかしユーザーの反応は鈍く、その広告メディア自体の運用継続を諦めかけていた。

 ある時を境に集客部隊は、その限界を超えた。今あるサービスを広告するのではなく、店舗スタッフと協働して新規の講座(特定テーマの住み替え相談メニュー)自体を作って広告したのだ。そうすることで劇的に効率が改善した。

 CPAは60%低下、コンバージョン数は半年で5倍に増加した。

 この事例は、アドテクなど手段先行のマーケティングが、それだけでは成長できる上限が決まっていることを示唆している。テクニックによる成長の限界をテコの原理的に超えていくためには、自らがサービスの現場に足を運んで手を動かし、経験したこと。つまり原体験としての一次情報から生まれてくる着想が極めて大事だ。

 市場理解の重要性は今も昔も変わらないが、その背景は異なる。現代のマーケターは増えすぎたメディアフォーマットと広がり過ぎた統合範囲へのオペレーションにエネルギーの大半を費やし、ユーザーに何を提供すべきかを考える時間が相対的に小さくなっているように見えてならない。

 テクニカルな効果改善のループから自らを解放して作り出した時間を、市場へのとりわけ深い造詣を得るために割り当てる。それを土台に社会インパクトドリブンな思考ができるようになり、強いビジョンの構築と作家性の発揮による手段の取捨選択ができるようになる。

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