テクノロジー

ヤフーとLINEの経営統合、マーケティングの識者はどう見た?

 

巨大IT企業の誕生、変わるマーケティング環境

ヤフーの親会社であるZホールディングスとLINEは18日、経営統合に合意したと発表した。新生Zホールディングスの傘下にヤフーとLINEが加わり、共同代表に現Zホールディングス 代表取締役社長 CEO 川邊健太郎氏とLINE 代表取締役社長 CEO 出澤剛氏が就任する。共同記者会見では、国内外でユーザーの支持を集めるGAFAへの強い危機感を表明し、「日本・アジアから世界をリードするAIテックカンパニーを目指す」と宣言した。
 
固い握手をするZ ホールディングス 代表取締役社長 CEO 川邊健太郎氏(左)と、LINE 代表取締役社長 CEO 出澤剛氏(右)。
月間利用者数6743万人のヤフーと、8200万人のLINEの統合による巨大IT企業の誕生をマーケティングの識者はどう見たのか。
 

足立氏「今後の成長は、新しいサービスの成否次第」


日本マクドナルドのV字回復の立役者のひとりで、現在はポケモンGOで知られるナイアンティック シニアディレクターの足立光氏は、次のようなコメントを寄せた。

「まず、ヤフーが強くないメッセンジャーや動画、LINEが必ずしも強くないショッピングなど、ほぼ完璧な補完関係の統合なので、日本国内のネットビジネスにおいて各サービスでトップの位置をとれるでしょうし、国内の消費者の大多数を網羅するようなサービスが実現できることは、明らかにメリットです。

しかし一方で、LINEの出澤社長が自ら警鐘を鳴らしていたように、『大企業化』してはイノベーションは生まれません。LINEが合併するヤフーは明らかに大企業(しかも、近年の動きは必ずしも早くない)ですし、LINEも最近は戦線を広げ過ぎて新規事業での勝率は必ずしも高くありません。そのため、今後の日本での成長は、新しい体制で、これまでに無かった新しい製品やサービスを生み出せるかに掛かっていると思います。

加えて、ヤフーはほぼ日本企業ですし、LINEが海外で成功してるのは台湾とタイなどで、決して両社とも『海外市場を攻略してきた』実績が豊富なわけではありません。また、海外の大手との資本競争では、合併したとしても、まだ大きな差があります。

図体は大きくなったけれども、それ以上のシナジーがなく成長できなかった例は過去に少なくありません。今回の2社には、その轍を踏むことなく、合併したからこそ実現できたという新しいサービスを矢継早に提供して日本市場を席巻し、海外でも躍進してほしいと期待しています」(足立氏)
 

佐藤氏「政治的な大人のディールという印象」


一方で、トランスコスモス 取締役 上席常務執行役員兼CMOの佐藤俊介氏は、GAFA対策よりも、統合によって獲得するデータが自社のマーケティング施策に大きなメリットを与えると話す。

「個人的に、この統合はPay戦争で『お互いの矛を鞘に収めよう』というディールだった気がします。一言で言えば、政治的な大人のディールという印象です。このままだと血を流し続けるため、トップ2社が統合することで、まず戦争を終わらせる。それ以下は、もうPay合戦で勝ち目がなくなりますし。そのくらいPay合戦は、各企業にとって厳しい戦いだったと思います。

マーケティング視点で見ると、正直なところ、それほどのシナジーは生まれないと思っています。ただし、Pay関係でこれから実現できるマーケティングは非常に強力で、この領域を2社で取り合えるメリットは大きいと思います。これからPayPay、LINE Pay連合はWeChatPayのように公共サービスはじめ、何から何までを支払えるサービスになり、多くのユーザーのリアルなデータを手にして、最適なマーケティング施策が行える唯一の会社になるでしょう。今回の統合をGAFA対策とする分析が多いですが、それはあまり意識していないと思います」(佐藤氏)
 

鈴木氏「AIを主眼とした競争軸は、かなり野心的」

広告を出稿するクライアント側の立場である、ニューバランス ジャパンの鈴木健氏は、グローバル企業との競争軸として定めたAIに期待する。

「一番印象的だったのは、やはりGAFAやアリババなどグローバルテック企業と比較したスライドです。スケールの違いは当然ですが、そのようなプレーヤーに対してAIを主眼とした競争軸をとっていく方針は、かなり野心的だと感じました。日本だけに限って言えば、ヤフーもLINEも広告プラットフォームとしては大きな地位を占めています。そのため、海外の競合テック企業を横目に見ながら、適宜日本市場に合わせた展開ができるポジションにあります。今回の統合で日本での地位がさらに強化されれば、統合のシナジーも意味のある優位性になるでしょう。一方で、グローバルで戦うとなると、リソースが要求されるAI分野で、どのような競争をイメージしているのかは未知数です。この辺りは、中国や米国企業のスケールの違いが、そのまま差になる可能性もあります」(鈴木氏)


両社の経営統合は、2020年10月に完了予定。日本最大規模のIT企業の誕生は、ペイメント市場のみならず、マーケティング領域にも大きな変化を与えることが予想されている。

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