マーケティングの現場から考える「5年後の実際」 #06

LINEは、CRMの何を変えるのか? 自由に旅できるオープンワールドな「顧客体験」の世界へ

「One to Oneマーケティング」の未来


 さて、この連載はこれまで5回にわたり通底したテーマがある。

 真の「One to Oneマーケティング」とは何か?という問いから、5年後の未来に向けてどう歩みを進めるべきかを思索することだ。

 連載を開始してから今回でちょうど1年。AI活用やLINE導入など、様々な試行錯誤の連続だった。その過程が、過去10年に渡り私の身体に定着してきたメッキを剥がすように、新しい切り口を与えてくれた。

 「ユーザーがもっと自由に旅できる、オープンワールドな顧客体験」をいかにつくるか。

 それが新しいCRMをつくっていく鍵になる。

 シナリオをつくって態度変容を促していく。ステージアップせよと言わんばかりのプッシュ配信を繰り返す。そうではなくて、選択肢をオープンにし、対話のラリーを重ねて引き込む場づくりこそが、これからの時代にふさわしいCRMのコンセプトであると私は信じている。

 従来のCRMやマーケティングオートメーションが指す「シナリオ設計」は今後もすぐには無くならない。しかしそれを押し付けるのではなく、どのシナリオを選択するか、ユーザー自身の手に委ねてしまおう。

 そうして、その人らしさを尊重しながら、企業として提供出来うるソリューションを織り重ねてゆき、結果として真のOne to Oneと言える状態に辿り着くのではないか。

 これが、現時点での私の答えだ。
 

最後に


 実はここで本連載寄稿に込めた思い、この仕事を引き受けた理由を明かすと、マーケティングオートメーション業界へのエールのつもりで書いている。

 2014年、海外のベンダーが日本ブランチを設けるなどして「マーケティングオートメーション元年」と呼ばれた。私は少し先駆けて、これを導入した。高価なおもちゃを手にした子どものように、ただただ楽しかった、没頭した、大好きだった。

 思い入れのあるマーケティングオートメーションだからこそ、「要はメールマーケティングだよね。」という認知の域を出ず、時には失敗のレッテルを貼られている現状に対し悲しく思う。

 同時に、業界ではOne to Oneという言葉が神話か枕詞のように軽々と語られていることに、やるせなさを感じる。

 だからといって、ただの「マーケティングオートメーション賛美」をするのではなく、あえて厳しい指摘をさせていただいた。そして、私の実践経験を基にしながら出来る限りの知恵を絞り、無骨ながら業界への提言もさせていただいた。

 前回の記事「次世代マーケターに求められる5つのスキル」の中で、「未来の変化にアジャストせよ」というメッセージを綴った。事業会社と伴走会社(ベンダーや広告会社)、ともに手を取り、未来に打った点から逆算して一緒に挑戦していきたい。そんな思いも込めている。

 ほんの少しでも業界の発展の役に立てたなら、私にとってこれ以上に嬉しいことはない。
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