顧客基点の「ソーシャルメディア戦略」 #08

ツイートは世につれ、世はツイートにつれ。タイミングを捉えたツイートが世の中を動かす

世の中の話題に便乗してみる


 さて、みなさんの頭の中にはどんな投稿案が浮かんでいるだろうか。

 投稿タイミングだけでも複数の選択肢がある。とは言え、イングヴェイの速弾きのように息つく暇も無く多弁に繰り返し繰り返し語り続けるのは、控えめな性格の無印良品SNSには似合わないので、ここぞ!というタイミングを見出したい。

 そのような視点で、まず思いつくのが「商品の発売日」。新商品ということだけでも大きな価値がある。“本日発売”“今日から店舗に並びます”など、“新しい”推しで興味を惹くのも効果的だ。

 次に、手袋のような季節商材の場合、気温の変化なども購買動機を高める。その季節に必ず訪れる「気温が一気に下がった日」を狙うのも活用したいタイミングだ。

 「商品の発売日」「気温が一気に下がった日」も選択肢のひとつであり、間違いでは無い。しかしながら、この魅力的な商品を伝えまくりたい欲求を抑えることができない運用担当者としては、もう一歩踏み込んだ可能性を探りたい。

 無印良品でタッチパネル手袋が初めて登場したのが2010年。発売2年目の2011年に同商品が登場した際、筆者はSNSの「リアルタイム性」に着目し、新型iPhoneの発売日にこの商品を紹介した。

 なぜ、iPhoneの発売日なのか?今になっては以前のような熱狂は薄れたが、新型iPhoneの発売日には、入手した喜びや使い心地を伝える投稿がタイムラインを埋め尽くすことがお決まりの光景になっていた。

 こういった世の中の話題、SNSの中での話題にどのように寄り添うのかが、ひとつの投稿の瞬発力に大きな影響を与える。大声で「見てください」「聞いてください」と叫んで注目させようとするのでは無く、目の前のタイムライン内でのフォロワーたちの会話に自然な流れで加わることが、SNSでの対話の醍醐味なのだ。

 話をタッチパネル手袋に戻そう。もちろん無印良品ではiPhoneは発売していないが、Apple製品とSNSの相性の良さを活かせるタイミングはないかと画策している中、筆者の元になんの気取りも無く現れたタッチパネル手袋。

 新型iPhoneの発売日にあわせてSNSで紹介したところ、この投稿が発端となり、前年をはるかに超える売上を記録することになった。そう、SNSをきっかけにモノが売れたのだ。
 
SNS紹介後の「タッチパネル手袋」売り上げ推移(赤グラフが投稿当日)

 別の年には、同様の手法でスマホ用の充電池を紹介した。これもまた、飛躍的に売上が伸びた。充電池のような商品も店舗ではなかなか発見してもらえない地味な存在だったが、SNS内の潮流を捉え、自然な流れで会話に参加することで、商品認知のきっかけを生み出したのだ。

 Apple製品の発売日だけでなく、こういったタイミングは無数に存在する。なんの脈絡もなく投稿するのではなく、こういったコンテンツ×タイミングの掛け算が、想像以上の効果につながる可能性は大いにあるので、世の中やSNSの話題に品良く便乗し、SNSならではの情報伝播力を活かしてほしい。

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