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サントリーが進めるデジタル人材育成講座 #02

「ビジネススキルの有無が、デジタルマーケティングの成果を左右する」サントリー 室元隆志

前回の記事:
サントリー若手社員が支店トップレベルの売上、成果につなげたデジタル人材研修とは

なぜデジタル人材育成に、ビジネススキルが必要なのか

 デジタル専業ではない企業にとって、デジタル人材の育成に必要な要素とは何だろうか。私の中では、大きく分けると2つの分野のスキル習得が必要だと考えている。それは「デジタルスキル」と「ビジネススキル」だ。

 なぜデジタル人材育成に、「ビジネススキル」が必要なのか。

 不思議に思われる方が多いかもしれないが、私のこれまでの経験から「ビジネススキルがデジタルの成果を左右する」と感じているのだ。

 従来のマーケティング、特にマスマーケティングは何十年という歴史があり、企業内にもノウハウが蓄積されているうえ、対面する広告会社というプロフェッショナル集団も存在している。そこで、どのように仕事を進行すべきか、あるいは成果を積み上げていくべきか、そしてその効果をどう社内にフィードバックしていくのか、ある程度の仕組みが完成している。

 一方で、デジタルの世界はまだ歴史が浅いこともあって、仕事がスムーズに進行する仕組み化は、まだできていないように思う。加えて、デジタルの場合はオウンドメディアやソーシャルアカウントなど、往々にして自社での運用が必要であり、外部メディアのように広告会社にコントロールしてもらうだけでは成立しない。

 特にデジタルマーケティングのスキームや成果を上げるための肝、リスクヘッジなどを社内の他部門、例えば事業部門や営業部門の担当者に理解してもらい実行していくためには、かなりの説明能力が必要になる。

 よって、プレゼンテーションや説得のためのスキルが低いと、仕事がうまく進まないばかりか、膨大な工数が掛かってしまうことがよくあるのだ。そこで、私の部署では現在、スキルを4つの分野に分けている。
 
  1. デジタル基本スキル
  2. デジタルアドバンススキル
  3. ビジネス基本スキル
  4. ビジネスアドバンススキル

 

デジタル基本スキルとデジタルアドバンススキルとは何か

 「デジタル基本スキル」とは、デジタル専門部署として仕事を回すために最低限、必要なスキルと定義している。例えば、デジタルマーケティングの基本的なフレームワークや効果測定手法、PDCAの回し方など、多くの場面に出てくる各技術に関する知識だ。

 すなわち、デジタルの仕事の考え方と進め方を理解してもらうこと、および社内の他部門や特に社外のパートナーと仕事をするにあたって、「相手の言っている意味がわかる」レベルになることを指す。

 一方で、「デジタルアドバンススキル」とは、部署内の各チームの機能ごとに違っている。SEOやリスティングの技術、インフルエンサーマーケティングなど、自社やブランドの抱える課題によって必要な能力は大きく異なってくるだろう。
 
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 このデジタル特有のノウハウや技術によって、他部門にはできない成果の上げ方が実践できるようになる。ちなみに私の場合、自分で実験ブログを立ち上げて、特定キーワードでgoogle1位になるまでSEOを実践してみたことがある。ブログ記事をどのように書いてリンクを貼れば、EC売上を上げられるのか、アフィリエイトを使って実験したりすることで、「デジタルアドバンススキル」を磨いてきた。

 さらに私的な実験だけではなく、通常のブランドマーケティングであれば、数十から数百のキーワードしか運用しないリスティング広告も、数十万キーワードを運用してみるなど、業務経験の中でもイノベーションと呼べるレベルのソリューションを部署内で開発している。

 そうした「デジタルアドバンススキル」を多様に習得する中で、起こしてきたマーケティングスキームのイノベーションが多々あり、デジタルマーケティングは、やはり外部に丸投げではなく、深く理解をして応用することが大切だと感じている(現在は、各分野の社外エキスパートを招聘して、必要なスキルを自部署のメンバーに学んでもらっている)。

 そして次が、本稿のテーマである「ビジネススキル」だ。

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