顧客基点の「ソーシャルメディア戦略」 #09
人気お笑いコンビ「コーンフレークネタ」で話題。Twitterでバズると、売上に影響を与えるのか
「話題化=売り上げ増」の方程式は成り立つか
ツイート前後の売り上げ推移をご覧いただこう。
赤色の棒グラフがSNS投稿の当日だ。
各棒グラフのパーセント表示は、SNS投稿日の前日対比(実店舗とECの合算)。該当ツイートは午後11時過ぎに投稿されたので、売り上げに影響を及ぼすなら投稿の翌日から。
そう、残念ながら売り上げへの影響は微塵も無い結果となった(むしろ売り上げが落ちている)。
筆者の短絡的な妄想はみごとに崩れ去ったが、ここでもう一つのグラフを見ていただきたい。
こちらはフォロワー数推移のグラフだが、実はこの投稿後の一日で、フォロワーが約2,000人増加した(折れ線グラフ 赤線箇所)。
通常時の平均的な一日の増加数が300人前後だったので、それまで一週間かけて獲得していたフォロワー数を一日で獲得したことになる。
リツイートが増えることで、無印良品アカウントの非フォロワーにも投稿が届き、興味を持ったユーザーがアカウントをフォローする。これこそSNS、とりわけ拡散が起こりやすいTwitterの醍醐味でもある。
必ずしも「話題化=売り上げ増」とはならないが、副産物的な結果として話題化が新規ユーザー獲得につながる事例は多い。フォロワー数が増えるということは、自らの言葉で一次情報が直接伝えられる相手が増えるということだ。SNSでの話題化が売上や来店などの事業に直接的な影響が無かったとしても、フォロワーが増えるような結果があるならば、それは十分評価に値する。
バズり”で獲得したフォロワーをつなぎ止められるか
実はバズる投稿を生み出すこと自体は、そこまで難易度が高いものではない。小室哲哉氏の定石コード進行「Am→F→G→C」のように、バズりの“型”を見出してしまえば、バズる投稿の量産はある程度可能だ。
しかしながら、運用担当者が注力すべきはバズり狙いやオモシロ投稿ではなく、きっかけは何であれ、自社のSNSに興味を持ってくれたフォロワーに継続してフォローし続けてもらうことだ。
同じバズりでも、広告も併用したフォロー&リツイートキャンペーン投稿を実施した際などは、キャンペーン終了後に一気にフォロワーが減少してしまうことも多いが、それを「インセンティブ目的だから当然だ」と諦めてしまうのか。
いや、バズりを点としてではなく、バズりの先までを想像して設計すれば、その壁を乗り越えることもできるはずだ。
時を戻そう。
冒頭にご紹介したケロッグとノザキのアカウントは、バズり投稿後も丁寧な情報発信を続け、フォロワーとの良質な関係を築いている。
両社は、運用スタイルとしてはカジュアルなアカウントに分類されるだろうが、担当者の趣味趣向を表現するような投稿を繰り返すアカウントとは異なる。適度な柔らかさと親しみやすさを感じさせつつ、自社事業から逸脱しすぎない絶妙なバランス感を保ち続けている、カジュアルな運用を目指す企業にとって参考にすべきアカウントの一例であると言える。
バズりを求めることは担当者の性でもあるが、バズりを単なる話題化で終わらせず、バズりのその先にこそ気配りが必要であることを、ケロッグとノザキの事例から得ることができるだろう。
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