顧客基点の「ソーシャルメディア戦略」 #10

SNS無期限禁止は、お客さんとの対話を遮断する表明である

無理をしないアカウント運用を


 最後に、筆者が無印良品アカウント担当者として定めた運用ポリシーをご紹介しよう。
 
無印良品ソーシャルメディア運用ポリシー(風間担当当時)

 ときおり、「SNSなのに質問の返答が即座に無い」と憤りの声を挙げていらっしゃる方をお見かけするが、即時性やリアルタイム性が高いSNSだからと言って、その対応方針を特別扱いする必要もない。

 上記(4)についての補足でもあるが、安定したアカウント運用の継続には担当者の無理も禁物だ。若干極端な事例で恐縮だが、ひとり運用者だった筆者は、夏季休暇などでアカウント運用から離れる際は、下記のような投稿をしてアカウント運用の休止を伝えるようにしていた。
 
無印良品 公式ツイッターより

 会社として重要度の高い情報はタイマー投稿で対応したりもしたが、休暇中のすべての投稿をタイマーで実施すると、画面の向こう側に運用担当者の存在を感じられてしまう。

 本当は休暇中なのに通常どおりの運用をしているように振る舞うことで、普段と同様に質問が届くことも十分考えられる。

 筆者は仕事と休暇は明確に線引きしたい性格だったこともあり、休暇の日までメンションを追いかけたくは無かったので、あえて休暇を取ることを公言、且つ、緊急度が高い問い合わせはカスタマーサポートの窓口へと案内を伝えていた。

 ここもサポートの重要度によって異なるが、このくらいの力の抜き方もSNSらしさである。無理をしすぎないのもアカウント継続のポイントだ。運用担当者のみなさん、ぜひ、疲れない運用を。

 ここまで、SNSでの対話の価値について述べてきたが、もちろん、原則顧客とは対話しない(質問には返答しない)という運用スタイルを選ぶ企業もある。

 企業SNSの成功事例として頻繁に取り上げられるスターバックスコーヒー東京ディズニーリゾートPRは、タイムラインを見る限り、リプライによる返信は行なっていない。

 それにも関わらず、顧客からの反応は常に高く、強固な信頼関係を築いている。それは、圧倒的なコンテンツ力やリアルな場での顧客体験の品質の高さなどの要因が相まっているからこそなし得ているものだろう。

 発信のみなのか、対話も行なうのか、どちらが良い悪いと断定できるものでは無いが、SNSを使った顧客と企業の対話は、顧客の課題解決を導くだけでなく、顧客満足度の向上につながるひとつの手段だと言えるだろう。

 自社SNSアカウントに対しての顧客の声に返答するかしないかを判断する書類に何個も印鑑を押している間に、気がつけば顧客は企業の一歩も二歩も先を歩み、新しいプラットフォームやツールを柔軟に活用するようになっている。

 特にTwitterは双方向性に秀でたSNSだが、フォロワー全員への発信である「ツイート」のタイムラインをA面とするならば、タイムラインのB面である「ツイートと返信」は対話重視型アカウントの主戦場だ。

 対話に力を入れたい企業のみなさんは、積極的に対話を続ける小売業などの先行事例からその熱量を感じて、顧客とさらなる良好な関係性を築く上での参考にしていただきたい。
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