顧客基点の「ソーシャルメディア戦略」 #11

「#エアJリーグ」知っていますか? 新型コロナで感じたハッシュタグの力

 

ハッシュタグでつながるSNSコミュニティの未来


 Jリーグの事例も、水族館/動物園の事例も、企業と顧客をつなぐ拠り所はハッシュタグだ。

 共通のハッシュタグで投稿された一つひとつの発言、画像、動画、感情が集まると、そこは時間の流れに沿った単なるタイムラインではなく、同じ嗜好や感情を包含した「コミュニティ」へと昇華する。

 これまで企業のWebコミュニティは、オウンドメディア内に独自のコミュニティサイトを設ける形が定石で、ベネッセの「ウィメンズパーク」、無印良品の「IDEA PARK」などはその成功事例としてあげられることが多い。

 筆者もIDEA PARKの運営に携わった経験を有するが、ECやアプリも優れたパッケージ製品が台頭している昨今、企業コミュニティサイトもオウンドメディア内でのスクラッチ開発に固執せず、SNSでハッシュタグを軸に顧客と「優れた場」を築くことが出来ることの可能性を今回紹介したSNSでの事例は示してくれたと感じる。

 もちろん、タイムラインでの交流には制約もあり、ストック型の運用スタイルを目指すには不向きではあるが、同じ嗜好や想いを持った顧客やファンの熱量を可視化するのに、あえてハッシュタグコミュニティくらいの“軽い”仕組みを利用することが、コミュニティ参加も”軽く”なり、今の時代に合った新しいコミュニティ形成を実現出来るのではないだろうか。

 SNSなどのデジタルチャネルを活用することで、リアルの場に制約がある状況でも、企業は顧客やファンとの接点を保つことが出来るようになった。確かに、SNSにはデマやフェイクニュースなど不穏な面を加速させてしまう一面があるのも事実だが、筆者は希望に満ちたSNS活用を信じ続けたい。

 現時点では述べることは時期早尚だと言われるかもしれないが、状況が好転した暁に、スタジアムでプロならではの圧巻なプレーを目にしたり、家族と共に水族館や動物園を訪ねることを想像するのが楽しみでならない。
 


 なぜなら、人は平常時では無い日々での体験を、より深く心に刻み続けるから、有事に顧客に対して寄り添う姿勢を絶え間なく提供してくれた企業やブランドに、応援や感謝の気持ちを表現したいと考えるからだ。

 日々変化する状況の中、立ち振る舞いに苦慮しているSNS担当者の方も多いだろうと想像する。しかし、止まない雨は無く、明けない夜も無い。

 微力ながら、筆者もみなさんの企業のファンのひとりとして、その活動を応援し続けています。
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