Adobe Summit 2020 レポート #02Sponsored

2020年以降のビジネスに影響を与える、6つのマーケティングトレンド【奥谷孝司 Adobe Summit解説】

 

5.アジャイルマーケティングの継続的実践


 皆さんにも聞き覚えのある言葉であるアジャイル。アジャイルとは「すばやい」「俊敏な」という意味を持つ言葉であるが、システム開発の世界においては反復 (イテレーション) と呼ばれる短い開発期間単位を採用することで、開発リスクを最小化しながら、進行する手法のひとつである。

 この手法には、優先度の高い重要な機能から着手することを容易にし、テストをパーツごとに実施することもでき、要求と実際のプロダクトの間に問題が発生しても修正の影響範囲は限定される。このような開発プロセスで、クライアントの要件をすばやく反映しながらプロダクトを開発することが『アジャイル型開発技法』と呼ぶ。このような手法がこれからのマーケティングにも求められてくるという。

 コロナ禍において皆さんは、どのようなマーケティング、営業、プロモーション活動をしてきただろうか。

 こどもの日や父の日といった催事に対して、ビフォーコロナ時代と同じような対応を続けていないだろうか。

 今企業に求められていることは、お客さまの要望に応えるためにいかにファーストムーバーでいられるか、新しい顧客体験提供のアーリーアダプターでいられるかである。失敗を恐れず、お客さまのためになることをプロセスと優先順位を常に見直しながら、実践することが求められている。

 このようなアジャイルマーケティングで重要なKPI、キーワードはThroughput(スループット)という言葉だ。これはコンピューター用語で、一般に単位時間当たりの処理能力、コンピュータやネットワークが一定時間内に処理できるデータ量のことだ。つまり、今のマーケティング活動においては「処理能力」を高め、高速PDCAを回しながら、アジャイル型思考でマーケティング施策を実践する必要があるということを意味している。

 これを社内外のパートナーと遂行してくべきなのだ。コロナ禍の世の中の変化は当然ながら早い。今はじっくり腰を据える時期というよりも、より多くの挑戦から経験値を貯め、失敗があっても高速で自社のマーケティング活動を実行、修正する能力がマーケティングにも求められている。自社のマーケティング活動がアジャイル化しているか? ぜひ確認してもらいたい。
 

6.マーケティングが全社的なDXの触媒となる


 この点は前編で言及した通りだ。やはりマーケター、CMOはお客さまとのタッチポイントの最前線に立ち、売上を上げるだけでなく、エンゲージメントを形成し、さらに顧客中心主義企業のあるべき組織、システム指南を行う必要があるのだ。MarTechの図を改めて思い出してほしい。
 
図1:顧客を中心に据えたMarTechの実現



 CMOの果たすべき役割はますます広範になり、複雑化する。この任務を遂行するには組織内はもちろん、社外のパートナーとも連携した顧客経験設計が不可欠である。社内の空気を読む、忖度している暇はない。どんどん人を巻き込み、組織変革を進めてもらいたい。

 最後にJason Hellerは、未来学者であるアルビン・トフラーの著書「第三の波」より、「21世紀における無学な者とは,読み書きが出来ない者ではなく,学び・忘れ・また新たに学ぶことが出来ない者である」というセンテンスを紹介してセッションを終えている。

 このメッセージはつまり、不確実性の増した世界において必要なことはアジャイル思考で、学び、実践し、また新たな局面がきたら、今までの経験則を捨てて学び直し、挑戦することだ。

 それこそが今企業に求められている変化対応力なのだ。新しい世界の扉は開かれたばかりである。ここからの我々の挑戦が企業活動にどのような効果、影響をもたらすのか?緊張感と使命感をもって、DXに挑んでいきたいと思う。

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