テクノロジー
「一休がめざすのは、Netflixのような2次元の検索体験」Googleと共に生きていく時代の、Webサービスの行方
2020/07/27
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リニューアル前に比べ、売上が12%増加
一休.comのサイト内検索の結果を表示する際の、ビジュアルの見せ方にもこだわった。テーマの切り口が「料理自慢」であれば料理の画像を、「オーシャンビュー」であれば部屋から海が見えることが分かる画像を前面に出し、ビジュアルから自然に情報が受け取れるようにしている。
また、レコメンドでは過去の閲覧履歴や予約履歴によるパーソナライズも行い、たとえば、毎年家族で沖縄に行っている人であれば、時期が近付いたタイミングで子どもがいても利用しやすい沖縄のホテルを表示するといったことも、アルゴリズムに落とし込んでいる。
ビジュアルやアルゴリズムの設計を担当したデータ部門の佐藤亮介氏は、「新しい出会いをつくっていくことが、根本的なリニューアルの目的。お客さまが言語化できていないものを提示できるようなサイトを追求している」と話す。
リニューアルの話は、今年2月に立ち上がった。コンセプトや世界観を決めた段階で、新型コロナウイルス感染防止のために自宅勤務になり、リモートでフィードバックなどを行いながら作業を進めた。
現時点ではリニューアルを進めている途中だが、できたところからいち早くリリースしてユーザーの反応を見るなど、スピード感を大事にしている。驚くべきは、社長の榊氏もエンジニアとしてプログラミングに参加していることだ(編集部注:榊氏はエンジニアリングも得意とし、これまでも一休のサービス開発に関わってきた)。
「社長は担当の営業先を持っているわけでも、決まったルーティン業務があるわけでもなく、正直なところ時間に余裕がある。事業の執行は、それぞれの事業部長に任せていて、それも当社の場合は宿泊とレストランの2つの事業しかないため、事業間の調整も少ない。だから、ひとりの社員として企業に貢献することに時間を使える」(榊氏)。
コロナによる影響で、宿泊市場は対前年割れの厳しい状況が続いているが、一休.comの宿泊予約は6月中旬から上向いてきている。なかでも、2名で1泊10万円を超えるような高級宿が対前年プラス30%と、飛ぶように売れている。
この変化について榊氏は、「頻繁に旅行をしていたような人が、海外旅行に行けない反動もあり、外に行きたくてたまらない状況になっている。それなら近場で良い宿に泊まろうという考えが見えてくる」と分析する。
コロナの影響は少なからず受けたが、リニューアル後の成果として、「売上やコンバージョンレートは悪くない。新しい検索ボックスも使われているし、レコメンドした結果へのクリック率も想定以上ある」と、マーケティング部門の花房みのり氏は話す。A/Bテストでリニューアル前とリニューアル後の売上を比較したところ、リニューアル後の方が12%高かったという。
Googleから2次元検索ページへの流入も好調で、「訪問者数は非常に増えている」と榊氏。狙いどおり検索上位に表示され始めていることに加え、「一度は泊まりたいラグジュアリーな宿」といったテーマ別のランキングがGoogleに取り上げられていることが影響している。
今後はテーマ別ランキングの中でもパーソナライズを行い、より一人ひとりの直感的な要望に沿った提案ができるようカスタマイズしていくなど、すでに次の展開を見据えている。
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