マーケティングの現場から考える「5年後の実際」 #08

サービスとプロモーションが深く結びつく時代、「体験価値」の再定義が必要になる

 

体験価値とプロモーションの在り方


 ガリバーオートではペインポイントに手当てして体験価値を生み出したが、ペインポイントは次の2種類があると考えられる。

 ①エンドユーザーが経験的に、その痛みを知っている場合
 ②経験しないと知り得ない場合


 この①は直感で便利そうだと感じられるためプロモーションはいたってシンプル。一方で期待値が高まり、その期待を超える体験を提供できなかった時にガッカリされるリスクがある。

 次の②は、サービスの良さを事前にイメージしきれないため、逆に期待値はコントロールしやすく、これまで誰も手当てしてこなかったペインであればあるほどリターンが大きくなる可能性はあるかもしれない。

 一方で、啓蒙やトライアルといった努力が必要であったり、また、業界を知り尽くしているつくり手には刺さるコンセプトでも、一般に普及するかどうか事前にニーズの大きさを推し量ることが難しく、価値がうまく伝わらなければ空振りしたりするリスクがある。

 ガリバーオートの事例は、全員に共通するペインポイント、つまり「お店に行ったり人が来たりするのが面倒」「暇が無い」「交渉が苦手」、こういった①を押さえつつ、ターゲットとしては②の「これまであまり査定経験の無い方」としているという。より正確に言うと、新車購入時にそのまま下取りに出してしまう人。この割合が全市場に占める割合が高いためだ。



 よって、プロモーションの方針としては、「共通のペインポイントをフックとしつつ、査定未経験者への啓蒙をセットで行い、自社サービスが唯一の選択になるような動機をつくること」となる。メディアプランはダイレクトレスポンス系の広告配信よりも、戦略PRや認知広告を重視することが相応しい。

 ここからの学びは、サービスとプロモーションがこれまで以上に深く結びつく必要があるということである。SNS上の認知やコミュニケーションを重視するならば、なおさら体験価値は広告や自社に対する口コミを見たときから始まっていると考え、外部とのコミュニケーションを設計する必要がある。

 プロモーションを自社ならではの体験促進として成功させたいならば、プロダクト開発やサービス提供の担当者が、「プロモは専門家にお任せ」では片手落ちだ。つくり手も体験促進がどうあるべきかを含めて考慮する必要がある。

 また、プロモーションの担当者は、さもそこに不変の正攻法があるかのような、手段の聖域化をしてはいけない。体験価値とは何かをサービスの担い手や開発者と深く議論し、全ての可能性の中から最適なコミュニケーションの手段をセレクトしていかなければならない。

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