業界人間ベム #特別寄稿
業界人間ベム 特別寄稿「2021年 広告マーケティング業界5つの予測」
2021年、広告メディアに起きる大変化
新型コロナを収束できるか、それはいつか、オリンピックは開催されるか、など変動要素はあるものの、コロナ禍は将来なるべくしてなる状況を急速に早める方向に作用するだろう。広告・マーケティング支援産業でも、こうした前倒しが2021年から本格化すると思われる。まずは、広告メディアに起こる大きな変化に触れてから、5つの予測を紹介することにしよう。
- 印刷媒体の急速な衰退
新聞・雑誌の広告媒体としての市場は、予測より3年は早く減退するだろう。今年の雑誌広告市場の激減はさらに続き、新聞広告も発行部数の減少による効果の減退が数字にも表れるはずだ。
従来、甘かった部数カウントも厳しくなり、これまで頑張って維持してきたチラシ市場もかなり減少するだろう。新聞販売店の中には、Amazonなどのラストワンマイル(小規模物流拠点)として身売りするところも出てくるのではないかと思う。
- テレビ 試練の年
コロナ禍でテレビタレントのYouTuber化が激増したが、テレビタレントと芸能事務所との関係も変化している。これはコロナが収束しても元には戻らない。芸能事務所もメディアもエージェンシーもすべての仲介業者は、その存在価値を厳しく問われる。
テレビ番組の制作にも本格的にデータを活用して、思い切って世帯視聴率(ないし個人全体)ではなくターゲット視聴数をどれだけとれるか、従来よりも特化した試みが行われるかもしれない。その傾向はテレビ局発のオンライン番組(オンラインメイン:放送サブ)が増える現象になるだろう。
ここでいうターゲット視聴とは、現状テレビ離れしている若年層やビジネスパーソン層にならざるを得ない。テレビがYouTuberのコンテンツと競合する状況が激しくなるだろう。
プロが創るものの力が試される。製作費の削減がコンテンツの劣化につながると、在宅時間が増えても視聴が増えないことで負のスパイラルに陥る可能性もある。そしてもちろんオリンピックができるかどうかはテレビ業界にとっては非常に大きな分岐点だ。それだけ質の高いコンテンツ不足が否めない。
- 交通広告市場も危機的に
そもそもスマートフォンの普及によって、乗客が車内で中刷りを見なくなって久しいが、そこに到来したリモートによるワークスタイルの変化は、コロナ後もほとんど元には戻らないだろう。
人の移動によって接触可能な交通広告のダメージも大きい。設備投資が先行するデジタルサイネージの本格化は相当遅れるだろう。
- デジタル広告も選択肢が少なくなる
Cookie利用の制限や、個人情報データをきちんとした許諾なくつないでDMP化して配信に利用する、または個人のジオデータを利用したターゲティング配信などが、CCPA(カリフォルニア州プライバシー保護法)などの個人情報データの取り扱いに対する基本的な考え方の明確化で、かなり難しくなるだろう。
サードパーティDMP事業者も市場のほとんどを失うかもしれない。後述するが、企業の保有する個人データの取り扱いにおける概念は急速に変化する。下手にデータを持っていると、リスクの方が高くなる。そのため本来、ネット広告が得意としてきたターゲティング配信に陰りが訪れる。手法が拡大し続けてきたネット広告、デジタル広告ではあるが、2021年から数年は選択肢が狭まる可能性がある。
総じて実体経済がシュリンクしつつあるなか、個人消費も設備投資も今年はあまり期待できない。相当シュリンクしたであろう2020年とほぼ同じ程度の広告市場となる可能性は高い。盛り返すのは、2022年からだろう。
さて、今回は5つに分けて業界変化を予測した。次から紹介していこう。