業界人間ベム #特別寄稿

業界人間ベム 特別寄稿「2021年 広告マーケティング業界5つの予測」

 

予測2. 広告主の顧客データ、ゼロパーティデータ化への見直し元年


 ゼロパーティデータとは「顧客やユーザーが意図的かつ積極的にブランド側と共有するデータ」のことだ。それには、例えば、個人の購入プリファレンス(好み・傾向)や、個人的な背景やコンテキスト(文脈)、それから(重要なのが)個人がどのようにブランド側に自分を認識してもらいたいか、などの意思が含まれる。

 この概念は、GDPR(EU一般データ保護規則)から始まり、CCPA(カリフォルニア州プライバシー保護法)でより強化された消費者側の権利に対して、データ保有のあるべき姿を表している。この消費者側の権利とは、データを取得している事業者に対して、「私のどんなデータを保有しているのかを見せろ」、「私のデータのこれとこれを消してくれ」、「私のデータからどんな推量をしてマーケティングに使っているのかを教えろ」などを意味する。DSR(データ・サブジェクト・リクエスト)ないしDSAR(データ・サブジェクト・アクセス・リクエスト)という。



 また、CCPAにはDNS(ドゥ・ノット・セルマイデータ)という概念がある。これは単に「データを売るな」ではなく、取得した企業のグループ企業であっても「分析に利用するな」ということだ。

 これらの個人の権利を消費者がどんどんリクエストすると、企業側が対応するコストは膨大になる。たいして活用できないデータなら、保有しない方がリスクはない。

 CRMデータも含め、企業が持つファーストパーティデータは、日本でも本当に消費者の積極的な意志で提供されているものか、つまりゼロパーティデータなのかが問われる。「このサービスを受けるなら(絶対に読み切れない長文の)許諾条文をスクロールさせ、同意ボタンを押させる」という仕組みもCCPAではアウトである。

 個人情報データの取り扱いに対する姿勢は、SDGs並みに企業姿勢として評価の対象になるだろう。従来のように、規制をクリアできるよう情報システム担当者が対応するというレベルの話ではなく、経営者から始まる企業姿勢、企業方針、企業ポリシーとしての姿勢が重要になるのだ。

 2021年は、2023年の改正法施行に向けてだけでなく、日本でも米国発のグローバルな個人データに対する大きなルールチェンジに巻き込まれる。DMPなど従来構築してきたデータアセットをどうしていくか、許諾の取り直しも含め、大きな見直しを始めなければならない年になるだろう。

 これはディフェンスの話である。日本企業はこうした守りに関しては敏感で、重要性に気づくと対応は早いだろう。広告配信も含めデータに関わるサービス事業者は、この動きへの急速な対応を強いられる。商品戦略の完全な見直しを迫られるデジタル広告事業者も増えるだろう。

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