業界人間ベム #特別寄稿

業界人間ベム 特別寄稿「2021年 広告マーケティング業界5つの予測」

 

予測3:DXの本質は「人財育成」、エージェンシーは何ができるのか


 DXの本質は、人財を育成することである。それもデジタル人財を育成するというよりも、デジタル思考でビジネスを実行する人財を育成すると言った方がいい。あえて言うとITではなく、デジタル化はビジネスの現場にいる文系人財が主役にならなければならない。

 そもそも日本企業にはIT人財がほとんどいない。情報システム部も要件定義を含め、ほとんどすべてをSIerに投げる。IT人財はIT系事業会社にしかいないし、しかもそこでも足りないくらいだ。しかし、欧米にはIT人財が事業会社にも多くいる。だから、システム開発会社に依存しなくても自社でつくってしまう場合もあるが、そういうことよりIT人財とその会社のビジネス(現場)やマーケティングの両方の理解ができる人財がいるということが、日本との大きな違いだ。

 DXを推進するリーダーとしてのCDO(チーフ・デジタル・オフィサー)という概念は、急速に定着した。しかしCDOのロールは、非常に多岐にわたる。DXは資材・製造・物流・販売・マーケティングなど、企業のバリューチェーンのすべてを串刺しにしてデジタル化することであり、CDOの部門横断はどんなオフィサーより幅広い。本当はできるならCEOがした方がいいくらいだ。



 その意味では、マーケティング領域のデジタル化を推進するCDMO(チーフ・デジタル・マーケティング・オフィサー)をお薦めする。日本企業ではマーケティングの定義や領域があいまいで、本来連動が必要な部門での連携や言語統一すらされていないことが多い。この際、本来のマーケティング領域の再定義、統合連携もDXの名のもとに行うのが良策ではないだろうか。

 そこで、コンサルティング会社ではできない具体的なデジタル施策のエグゼキューションまでを事業会社と並走するエージェンシーが活躍の場を得られるだろう。もちろん人財を派遣する形も十分に考えられる。

 DXを概念だけ“賜る”時代は終わった。実践あるのみ、そして実践してスキルを育成するしかない。CDOはそのための環境づくりをする。特に人財育成のための仕組みや場づくりに腐心するのが役目だ。

 一方、エージェンシー側には、マーケティングコミュニケーションの本質とデジタルが分かる人財が必要だ。こうした人財はデジタル専門家では難しく、従来の広告マーケティングで鍛えられた人がデジタル活用のツボを理解し応用できるようになるということだ。いくつか手法はある。もちろん外部人財を採用して育成するプログラムもある。

 これからのエージェンシーには、手売りを脱却するオンラインでのプランニング&バイイングのオペレーションと、マーケティングのデジタル化を主導するコンサルティングの2種類の人財が必要だ。

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