業界人間ベム #特別寄稿 #02

動画CMの主導権は、テレビとネットどちらが握るのか?【業界人間ベム 特別寄稿 #1】

前回の記事:
業界人間ベム 特別寄稿「2021年 広告マーケティング業界5つの予測」
 

クリティカルな状況にあるテレビ


 コロナ禍で、衰退トレンドにあった産業やビジネスモデルが一気に縮小する現象が起きています。「日本の広告費2020」(電通発表)でも、新聞は前年比81.1%、雑誌が73.0%、ラジオ84.6%、地上波テレビ88.7%と大幅に縮小しました。
 
「日本の広告費2020」から作図

 既存のマスメディアは、いずれも下降トレンドにありました。新聞は既に産業としての存続の危機にありますし、テレビも本当にクリティカルな状況にあります。制作予算がどんどん厳しくなっていることが、番組内容やギャラの高いMC降板で視聴者にも分かります。これがコロナによる一時的なものであるという保証はありません。マスマーケティングの最大の貢献者でもあるテレビは、今後どうなってしまうのか、その状況を整理して予測してみたいと思います。

 まず、歴史を再確認します。日本のテレビ放送は1953年にNHK、日本テレビが開始。55年にTBS、56年にCBC(中部日本放送)、ABC(朝日放送)と続きます。58年(これはベムの生まれ年)に映画の観客動員数がピークを迎えますので、これ以降はテレビの時代になっていくわけです。

 ちなみにベムは、テレビアニメに関しては「鉄腕アトム」が放送開始した時に5歳でしたので、リアルタイムで日本のアニメを最初から視聴してきました。大学を卒業して入社した旭通信社(現アサツー ディ・ケイ)はアニメ番組の企画を得意にしていたので、自らいくつものアニメ番組枠(「ドクタースランプ」、「ドラゴンボール」、「ドラえもん」、「タッチ」、「キテレツ大百科」など)を扱いました。

 そもそも私が旭通信社を志望したのも、「巨人の星」のクレジットで知っていたのがきっかけでもありました。入社当時、社長室に1メートル50cmくらいの大きなマジンガーZが置いてあったのを思い出します。

 さて、それはともかく、地上波テレビ局が次々に開局した背景には、周波数行政があり、そもそもはGHQの方針にまで遡ります。GHQは戦時中の大本営発表のラジオ放送による国民煽動を問題視し、さらにテレビ放送が大きな影響力を持つことを予測していました。

 そこで、民間放送を育成する意図が働きます。結果的に最も経済効率の良い周波数帯(VHF帯域)を分け与られるようになり、それが不動のものとなります。その後、田中角栄氏が郵政大臣だったころから、各県に最終的に4波体制を整えるべく、各県の有力企業に出資させてローカル局をつくります。代議士さんにとっては、ローカル局とは持ちつ持たれつの関係で、従来からもローカル局の再編などが議論されても全く変わっていないのはいろんな理由がありそうです。

 もっともその存続が懸念されたのは、BS放送が開始した時です。考えてみれば、衛星から全国津々浦々に電波が降り注ぐのですから、キー局の地上波の放送をBSで流すとローカルネットワークはいらないわけです。そうでなくても、新たな参入組にチャンネルを優先していたら、今の状況は変わっていたでしょう。

 結局、地上波キー局のBS子会社が居並ぶことになります。みなさんはBSの視聴率をあまり知らないと思いますが、視聴者は圧倒的にNHKのBSプレミアムに集まります。NHK-BS1、BSプレミアム以外は「*」が非常に多いわけです。「*」とは、(視聴者が少ないため)測定不能レーティングを意味します。

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