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デジタルマーケティングで市場拡大を目指す #01

デジタルマーケティングの現状課題と、解決に必要な方向性の考察【ユーキャン 鳥羽 渉】

計測可能であることを過信してはいけない

 次にWebの視点から考えてみます。Webの特性は、行動を計測できることと認識されています。たしかに、特定のブラウザからのWeb上の行動はその通りかもしれません。

 しかし、人はデジタル上の接点だけで生きているわけではなく、さらに自分が所有するスマホだけを常に触っているわけではありません。現に私も会社のパソコンや自宅のタブレットから検索し、さまざまな情報にアクセスしています。はたして、そんな状況でユニークブラウザベースの行動履歴は信頼に足るデータと言えるでしょうか。

 ユーザー登録が前提のサイトであれば、デバイス横断でその行動を把握することもできます。ただECサイトで商品を選ぶ際は、自分のためだけでなく、家族のもの子供のものなど、様々な目的の商品を購入します。私自身、人前で自分のアカウントでログインした時、子どもに買ったおもちゃがレコメンドされて、あわてて画面を閉じた経験が何度もあります。

 具体的な数値の計測でも、同じ環境で異なるツールを使って計測すると数値が合わないことや、同じツールで計測しているのに自社と取引先で数値が合わないケースが多いです。というよりも、数値が合ったことがありません。なぜでしょうか。

 やはり計測可能であることを、過信しない方がいいです。数値はあくまで参考であり、仮説立案の補助指標と、少し突き放して考えるのが正解ではないでしょうか。
 

カスタマージャーニーは本当に必要か

 生活者の行動を分析し、施策立案のためによく使われるのが、顧客の購入にいたるプロセスを可視化させた「カスタマージャーニー」です。車や不動産などの高額な商品やB2Bビジネスといった、ある程度合理的な判断が期待できるビジネスであれば、カスタマージャーニーは有効かもしれません。
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 ただし、私の行動を振り返っても、消費材や食品などの購入時に、そこまで合理的な判断をしていたかというと、全く自信がありません。

 私は小心者なので、何かを選択する時には論理的に考える方だと思っています。そんな私でも、今日飲むアルコール飲料を選ぶ時は、目につく商品を何となく選んでいるため、合理的な理由が説明できません。何しろ棚の前に立つまで、ビールにするかチューハイにするかも決めていないのですから(結局、ハイボールになったりします)。

 モニター登録しているアンケートで飲料の購入動機を聞かれても、いつも「覚えているわけないだろ」と思いながら、答えをひねり出しています(もちろん、それなりに真面目にシチュエーションを反芻はしています)。

 カスタマージャーニーは関係者間でユーザーイメージを共有できるという利点がありますが、特定のターゲットに依拠し過ぎる弊害も考えた方が良いかもしれません。その結果、より大きな獲得を期待できる層に響かない施策になる危険性もあるのです。

 自分自身の行動さえ不合理なのだから、他人だってそうであるはずですね。

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