テクノロジー

市川海老蔵『通し狂言 源氏物語』 最新技術を駆使した映像表現の裏側と制作者の思い

 歌舞伎座で7月5日~29日にかけて開催されている「歌舞伎座百三十年 七月大歌舞伎」夜の部『通し狂言 源氏物語』。市川海老蔵・勸玄親子の出演や、能楽、華道といった日本の伝統芸能とオペラの融合などで注目されている。

 話題になっている理由は、もう一つある。プロジェクションマッピングと人体センシングを組み合わせた「イマーシブ(没入型)プロジェクション」の活用だ。海老蔵の身体にセンサーを取り付け、その動きに合わせた映像をリアルタイムで舞台や天井、床などに投影している。

 この最新プロジェクションマッピング技術を用いた演出は歌舞伎では初めてであり、新しい観劇体験として評論家からも評価されている。今回の映像表現を手がけた、ワントゥーテンの澤邊芳明氏に、企画の裏側を聞いた。

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なぜ歌舞伎に最新デジタル技術?

 『源氏物語』は市川海老蔵の祖父、父が代々演じてきた市川家にとってゆかりの深い作品、海老蔵自身も2000年から出演している。今回、主人公の光源氏を海老蔵、幼少期の光の君と春宮(とうぐう)を長男・勸玄が演じた。

 恋多き光源氏の光と陰を描いたこの演目は、宙乗りも見どころのひとつ。役者の体をワイヤーで吊り上げ、舞台や客席の上などを飛んで移動し、迫力ある荒波の映像をバックにした表現だ。これら『通し狂言 源氏物語』で重要な位置を占める映像演出を澤邊氏が手がけることになった背景には、市川海老蔵との出会いがあったという。

 「2017年11月に宮本亜門さんのお誘いで、東京2020参画プログラム『文化オリンピアードナイト』の座談会に海老蔵さんと出演して、意気投合したんです。後日、海老蔵さんから電話をいただいて『来年7月の大歌舞伎の舞台で、プロジェクションマッピングをしたい』と。詳しくお話を聞くと、2020年に向けて日本の文化発信していく中で、古典としての歌舞伎だけではなく、21世紀の新しい見せ方をしたい、という内容でした」
 
ワントゥーテン Fouder /CEO 澤邊芳明
ワントゥーテン Fouder /CEO 澤邊芳明
 現在、歌舞伎は伝統芸能に位置付けられているが、もともとは時代ごとの新しい表現を取り入れてきた。海老蔵の祖先である初代・市川團十郎も元禄時代の歌舞伎を代表する役者で、当時としては革新的な舞台に挑戦している。

 「海老蔵さんも『歌舞伎を継承しつつも、進化させていくのは僕の役目。海老蔵にしかできないこともある』と、言っています。さらに同時に、『歌舞伎座に来ていただいた観客に美しい絵巻の世界を体験してほしい』という。そこで、プロジェクションマッピングで、大和絵的な表現が実現するよう意識しました」
 

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