デジタルマーケティングで市場拡大を目指す #02
データへの過信は禁物、広告効果測定への向き合い方【ユーキャン 鳥羽 渉】
効果測定は大事
ユーキャンの鳥羽渉です。現場マーケターがデジタルマーケティングの課題について考える連載2回目のテーマは、「効果測定」です。前回では、マーケティング全体を俯瞰する中で、効果測定の問題点としてオンラインとオフライン、マルチデバイスなどの障壁、計測対象者の行動目的の違い(自分のための購入・家族のための購入など)で正確な計測が難しいことから、「デジタルはメジャーメント」のように過信しない方がいいと提言しました。
その考えは変わりませんが、それでも計測は必要です。
計測をしなければ、施策ごとのKPIの達成度合いや成功・失敗の要因分析を感覚で行うしかなく、マーケティング自体が経験豊富で勘の鋭い一部の人の独壇場になってしまいます。
つまり、分析を行ううえで「測定データの捉え方に、十分留意する必要がある」ということだと思います。
計測できるデータの留意点
私がデータに向き合うときに、意識していることは、次の通りです。- トラッキングできるのは、複雑なインサイトを経た、表層的な行動のみである
- すべての行動をトラッキングできるわけではない
- 同じユーザーでもデバイス間の行き来や、オンラインとオフラインの行き来がある
その中で、正しく効果測定するには、どうすればいいのか。
改めて、データ計測に関する課題を挙げた上で、「今できること」を考えていきたいと思います。
データ計測の課題1:成果が獲得型施策によってしまう
まず効果を測ると、CV(コンバージョン)前のラストクリックへの評価が高く出てしまうということが挙げられます。
もともとプログラマティック広告が出るまでは、計測可能といってもセッション単位であり、評価できるのはCVR(コンバージョン率)に基づく広告クリックのみでした。
私がデジタルマーケティングに従事し始めた当時は、広告商品と言っても純広告とリスティングがほとんどでしたので、それでも十分に効果は計測できていました。
しかし、広告商品が多様化し、それぞれの役割も複雑化してくると、特に認知系の広告は、セッション単位では赤字になってしまうため、単純な評価では出稿判断がしづらい状況でした。
そこから、CV前のサイト来訪につながった広告も評価するポストクリックが計測できるようになり、その後に第三者配信などを活用し、広告を見た(であろう)状態であるポストビューも計測でき、アトリビューションという考え方が生まれました。
これにより、広告施策全体が包括的に評価できるようになったかに見えました。
しかし、単に見ただけの広告やすぐに直帰してしまったレベルの広告を、CVにつながった広告クリックと同じ貢献値と判断するか、最初の接触に重きを置くか、最後のクリックを評価するかは、難しいと言えます。結局、“決め”でしかなく、広告費を堅実に運用しようとすると、評価が分かりやすいラストクリックに傾斜してしまうのは、やむを得ない状況です。
本当にそれでいいのでしょうか。
この状況のまま時間が経過すると、結果的に獲得偏重になり、より多くの接点を持つべき施策が蔑ろにされ、CV数がシュリンクする状況に陥ってしまいます。これは、前回の記事でも書いた「最適化も度が過ぎれば縮小均衡」の状態です。