TOP PLAYER INTERVIEW #01

メタバースはマーケティングを変えるのか? 一般社団法人Metaverse Japan馬渕邦美・長田新子インタビュー

  2022年3月14日、メタバース(Metaverse)領域で業界や企業の垣根を越えて最先端の情報や世界観を広く共有し、次世代の分散型インターネットWeb3時代に日本を活性化させることを目的に掲げる一般社団法人のMetaverse Japanが設立されました。代表理事には一般社団法人の渋谷未来デザイン理事・事務局長の長田新子氏、共同 代表理事にはPwC コンサルティング合同会社 パートナーで元Facebook Japan 執行役員の馬渕邦美氏が就任しました。次世代の技術として注目が高まるメタバースはマーケティングにどのような影響を与えるか、設立経緯からこれからの展望まで幅広く話を聞きました。
 

スマホの次の時代、世界の中心には日本がいてほしい


――まずMetaverse Japanを立ち上げた経緯を教えてください。

馬渕 コロナ禍の最中、「メタバース」という言葉が注目されるようになりました。現在は、デジタルの世界をスマートフォンが席巻していますが、次世代は何かと考えると、やはりVRやWeb3が中心になっていくだろうと想像しています。

 今後、さらにテクノロジーが進化し、時代が変わるスピードも非常に速くなっていく中で、VRやWeb3が台頭していくのであれば、やはりそのど真ん中に日本がいてほしいという強い思いがあります。

 iモード以降、いわゆるWeb2と言われる世界で、日本は負けてしまいました。僕は前職がFacebook Japan(現・Meta)で、どちらかというと日本と反対側にいたので、日本人として悔しさを感じていたんです。次の大きな変化では、日本が持つのIPやコンテンツ、経営者を世界に出していく、最後のチャンスかもしれないと考えました。
 
PwC コンサルティング合同会社パートナー/元Facebook Japan 執行役員馬渕 邦美氏

 とはいえ、メタバースという考えは、非常に概念的です。将来、それを成立させるにはVRや通信、Web3、ゲーム的なさまざまな要素があると言われていて、それだけでもたくさんの業界が絡んでいて、ひとつの企業が推進していくことには無理があると感じていました。そこでハブとなる組織をつくり、各業界をつなぎながら議論の土台を提供していく必要があると考えたのです。

 代表理事である新子さん(長田)とは、仕事をしたことはありませんでしたが、もともと友人でした。「日本がメタバースに取り組むうえでハブになる組織をつくるのはどうだろうか」と話をしたところ、「やってみよう!」と意気投合したんです。

 ほかにも、さらに盛り上げてくれそうな協力的な人達に声をかけていくと、ひとつ返事で賛同したいという答えが返ってきて、私たちの考えに共感してくれた人が本当に短い期間で集まりました。一般社団法人ですので、利益を得ると言う事ではなく、日本のハブとなると言うミッションに共感頂けた結果だと思っています。

――長田さんは、どのような考えで参画を決めたのでしょうか。

長田 私はもともとヨーロッパの通信会社でグローバルスタンダードを推進するチームに所属していましたが、まさに日本でiモードが採用された時に解体され、広報責任者として世界規模でモバイル市場が爆発的に伸びる瞬間を見てきました。その後、レッドブルでブランドや体験の場づくりとコンテンツの制作の経験を経て、今は渋谷区でオープンイノベーションにより都市の未来をデザインする団体に所属しています。そこでテクノロジーを使って、街をアップデートするプロジェクト「渋谷5Gエンターテイメントプロジェクト」などに携わり、その中で生まれたのが「バーチャル渋谷」です。

 その中で、コロナの影響により人々が渋谷の街に来なくなり、リアルな街の存在価値が疑問視されるような状況にも直面した一方で、テクノロジーによりコミュニケーションの在り方が変わっていくということも体験しました。そこで、渋谷で開催したソーシャルデザインをテーマとするイベント「SOCIAL INNOVATION WEEK SHIBUYA」では、あえてさまざまな人たちを呼び、さまざまな角度から社会全体を考える機会をつくりました。
 
一般社団法人渋谷未来デザイン理事・事務局長
長田 新子氏

 そのとき、馬渕さんにも登壇してもらい、NFT(非代替性トークン)やメタバースという切り口でディスカッションをしてもらいました。この領域にもいろいろな視点があることを感じ、この先、発展していく中で、また日本は独自路線を進んでグローバルと別々の道を歩んでいってしまうのではないかと危機感を感じました。

 私が携わっている「渋谷区公認バーチャル渋谷」は、メタバースのひとつの原型のようなプロジェクトです。そこでは、まさに渋谷区の産官学民のハブのような役割を果たしているので、その知見や人脈を生かして、メタバースの土台となるような役割で貢献することができると思い、Metaverse Japanの立ち上げに参画しました。

 毎日がさらに忙しくなることはわかっていたため迷いはありましたが(笑)、マーケティングという側面でも新しい刺激を得られるし、今やらなければおそらく後悔するだろうと思いました。また、私のように、マーケティング、街づくり、メタバースという3つの要素を持っている人はほとんどおらず、これから社会が変化していくうえで必要な要素なのではという思いもありました。

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