TOP PLAYER INTERVIEW #01

メタバースはマーケティングを変えるのか? 一般社団法人Metaverse Japan馬渕邦美・長田新子インタビュー

 

メタバースの発展はライフスタイルを変え、社会の在り方も変える


――マーケティングという視点では、メタバースの活用をどう考えていくべきでしょうか。

馬渕 Web3メタバースによってマーケティング業界には非常に大きな変化が訪れるので、まずはメタバースを含めた新しいテクノロジーを体験することが非常に大事だと思います。その体験を通して自分の感覚に変化が起きるので、その世界に寄り添った表現をするにはどうすればいいのか、そしてどのようにビジネスをしていけばいいのかという順番で考える必要があると思います。

 いずれにせよ、今までのやり方では全く通用しません。広告を掲出するにも、バナー広告やOOHのように目立つところに掲出すればいいということではなく、そもそもメタバース上に人を連れて来なければならないなど、まったく新しい発想で考えていく必要があります。

長田 メタバースでは、今までとは異なる体験価値を提供できるようになり、マーケターにとっても新しいアイデアを試せる場になります。まだ一度もメタバースを体験したことがない人は、まずは体験してみた方がいいと思いますね。

馬渕 最近では、「メタバースをつくりたい」「メタバースでビジネスを行いたい」という相談も非常に多くありますが、ただつくるだけでは、空っぽのWebサイトをつくったことと同じです。そうならないために、そもそも何のためにつくるのか根本から思考して、メタバースをつくること自体が目的にならないようにしてほしいと思います。

――メタバースの登場によって、この先の社会はどう変わっていくと思いますか。

馬渕 携帯電話が世の中に出てきた当初は、持ち運べて通話はできるけれど、とても大きいものでした。そこからガラケーになり、スマホになるというように、ケータイも15年ほどで想像も使いないほど大きく進化してきました。現在のメタバースの発展の度合いをケータイに例えると、ガラケーがインターネットに接続できるようになった、ちょうどiモードくらいの時代に位置すると思います。


 
 2030年に5Gが6Gに変わりWi-Fiよりも速い速度で情報交換ができるようになり、今では考えられないようなことが、現実世界で起きると思います。10年前に戻って「スマホでこんなことができるようになるよ」と話してもきっと信じてもらえないと思いますが、同じようなことがメタバースでも起きていくんです。そうすれば、必然的にライフスタイルも変わっていくでしょう。

 そして、それに伴って社会の在り方やマーケティングにおける生活の捉え方も変わることは明白です。また、SDGsを大切にするなど、価値観や社会観も根本的に変わる世界になると思います。将来、メインストリームがどうなるかは分かりませんが、すでにWeb3を前提としてDAO(分散型自律組織)と呼ばれる組織の在り方が提唱され始めるなど、デジタルが中心となる社会への移行と新しい考え方が次々と生まれてきていることを日々感じています。
 

幅広いジャンルで広がるメタバースの世界観


――未来に向けて、どのように議論を進めているのですか。

馬渕 現時点で、実際にメタバースがどのように発展していくか、その可能性を考えれば、いくらでも語れてしまうというのが現状です。

 たとえば、Web3のゲームの世界観を体現した「Axie Infinity(アクシー・インフィニティ)」では、メタバース空間の中で仕事をし、クリプト(暗号資産)を稼ぐことができます。この世界観が拡大し、一般的に利用されれば、メタバース空間でモノを売る以外にも、販促や店内の案内など、いろいろな仕事が生まれていくことが考えられます。

長田 都市連動型メタバースであるバーチャル渋谷の運用から感じることは、画面で観る動画などの2Dとリアルの中間だということです。自分の分身がその中に入り、ライブを見て反応を返し、あげくにアーティストの隣で一緒にライブに参加することまでできるんです。

――過去を振り返ると、話題を集めたものの、消えていったサービスもあります。メタバースは本当に世界に定着していくのでしょうか。

馬渕 正直、どの様なコンテンツがメインストリームになるかはこれから決まって行くでしょう。しかし、スマホの次に世の中を席巻するものは必ず登場しますし、VR技術や通信技術が進化している現在のテクノロジーの方向性を見れば、そちらに向かっていくのは明確ではないかと思います。

長田 メタバースへの投資も進んでいるので、さらに発展することは間違いないと思います。いろいろな人の話を聞いても、やはりメタバースの世界観は徐々に広がってきていて、メタバース空間での観光案内やオフィスとして活用するなど、世界中の人がそこに集まるということも可能です。ほかにも医療や教育など、生活に密着したジャンルでも可能性がありますね。

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